劇団中芸

劇団中芸は、1951年8月29日に、新協劇団を脱退した薄田研二を中心とするメンバーによって、劇団中央芸術劇場として設立されました。その後、劇団名を劇団中芸と改め、新たなスタートを切りました。

設立当初の事務局兼稽古場は、南品川にあった薄田研二の自宅でした。書記長には野々村潔（女優・岩下志麻の父）が就任し、劇団の運営を支えました。劇団中芸は、社会的なテーマを扱った作品を多く上演し、観客に深い印象を与えました。主な上演作品には、ヘンリック・イプセンの「人形の家」や、松川事件を題材にした「真実は壁を通して」などがあります。その他、「こわれ甕」、「富島松五郎伝」、「国定忠治」といった作品も上演されました。

劇団の歩みは、必ずしも順風満帆ではありませんでした。1951年11月26日から翌年1月29日にかけて、中労委会館で第1回公演を開催しましたが、1954年9月26日には、洞爺丸事故という悲劇に見舞われ、6名もの団員を失いました。この事故は劇団にとって大きな痛手となりましたが、劇団は失意の中からも立ち上がり、新たに団員を募集しました。この時に劇団に加わったメンバーの中には、山田吾一、広田信夫（左右田一平）、陶隆、松山照夫、金井大、五月晴子、牧田正嗣といった、後に演劇界で活躍する人々がいました。その後、劇団は活動拠点を浅草田原町に移しました。

劇団中芸は、1959年1月15日に、村山知義が主宰する新協劇団と合併し、新たに東京芸術座として生まれ変わりました。この合併は、劇団中芸にとって新たな発展の機会となり、その歴史に幕を閉じました。劇団中芸は短い活動期間でしたが、社会派演劇の一翼を担い、多くの観客に感動を与えました。また、この劇団から巣立った多くの人材が、日本の演劇界に大きな足跡を残しています。

劇団中芸に関するより詳しい情報は、早稲田大学演劇博物館のデジタル・アーカイブ・コレクションで公開されている現代演劇上演記録で確認することができます。この記録は、当時の演劇活動を知る上で貴重な資料となっています。

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