劉テイ (明)

明末の武将、劉 綎は、字を省吾といった。元の姓は龔、後に劉と改めたとされる。倭寇討伐で知られた劉顕の子として嘉靖37年（1558年）に生まれ、本貫は南昌府南昌県高田。その並外れた武勇から、「劉大刀」の綽名で広く知られた。

劉綎は父劉顕譲りの勇敢さを受け継ぎ、万暦元年（1573年）に父と共に四川での九絲蛮討伐で軍功を立てた。万暦9年（1582年）冬に父が死去すると、劉綎は父の私兵集団である家丁を引き継ぎ、独自の軍事力を率いることになった。

父の後を継いだ劉綎は、南方辺境の安定に尽力。万暦11年（1583年）にはタウングー王朝の雲南侵攻を防ぎ、その後も各地の内乱鎮圧に貢献した。

劉綎の経歴で最も特筆されるのは、二度にわたる朝鮮出兵（文禄・慶長の役）への参戦である。万暦20年（1592年）に文禄の役が始まると、副総兵として家丁を含む5,000の兵を率いて朝鮮へ援軍として派遣された。万暦21年（1593年）に明の主力軍と合流し、日本軍と対峙。和平交渉期間中も主要な指揮官として朝鮮に駐留し、朝鮮軍の一部をも指揮した。万暦22年（1594年）には日本の加藤清正と独自に接触を図るなどしている。
慶長の役では総兵に昇進し、西路軍大将を務めた。万暦26年（1598年）、順天倭城の戦いでは水軍の陳璘と協力して日本軍を攻撃したが、損害を出し敗北した。その後、豊臣秀吉死去による撤退命令が出されると、劉綎は再び順天倭城を包囲。守将の小西行長と和議を結び、一族を人質として撤退を促し、城を接収した。

朝鮮での戦いを終えた後、劉綎は万暦27年（1599年）の楊応龍の乱鎮圧にも活躍したが、万暦44年（1616年）に地方官との衝突により更迭され、故郷へ帰るという晩年の曲折もあった。

後金との戦いが激化すると、劉綎はその武勇を再び請われ、万暦46年（1618年）に遼東総兵官として復帰。そして万暦47年（1619年）、明と後金の雌雄を決するサルフの戦いを迎える。劉綎は東南路軍を率い、後金の本拠地ヘトゥアラ包囲の一翼を担った。しかし、明軍の他の部隊が各個撃破される中、退却命令が劉綎部隊には届かず、敵地深くで孤立。同年3月4日、後金軍に遭遇し激しい攻撃を受けて東南路軍は壊滅。劉綎もこの戦いで壮絶な戦死を遂げた。享年62歳。

劉綎は常に120斤（約72キログラム）の刀を馬上で振るい突撃したことから「劉大刀」と呼ばれた。彼は家丁と呼ばれる私兵集団を経営し、出身地や民族を問わず戦力となる者を約2,000人従えた。文禄・慶長の役で投降した日本兵から鉄砲隊を組織し、楊応龍の乱で戦果を挙げたことは、彼の戦術的な柔軟性を示すエピソードである。

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