劉因

劉因（りゅう いん、1249年 - 1293年）は、元代に活躍した中国の学者です。彼の誕生には神秘的な逸話が残されており、父の劉述が神人が子供を乗せた馬を引いてくる夢を見たことから、「駰」と名付けられました。後に名を因、字を夢吉と改めています。諡は文靖です。彼は雄州容城県の出身でした。

生涯

幼い頃からその才能は際立っており、3歳で文字を理解し、読んだものをすぐに暗唱することができました。6歳で詩を書き写し、7歳にして文章を作成したと伝えられています。至元19年（1282年）には承徳郎・右賛善大夫に任じられましたが、母親の病気を理由に辞任し、故郷に戻りました。至元28年（1291年）に集賢学士・嘉議大夫に任命されますが、病弱であることを理由に固辞し、至元30年（1293年）4月に亡くなりました。延祐年間には翰林学士を贈られ、容城郡公を追封されています。

劉因は非常に清廉な人物であり、貧困の中で子弟を教える生活を送り、諸葛孔明の「静以修身」という言葉を愛し、住居を「静修」と名付けたほどでした。フビライからの招聘を固辞し、友人の許衡が仕官したことにも反対しました。許衡が元朝に仕えることについて「かくの如くなければ、道行われず」と説いたのに対し、劉因は「かくの如くなければ、道尊からず」と答えたと伝えられています。

著書

『四書精要』30巻
『丁亥集』5巻（詩集）
『静修集』（門弟が編纂した文集）
『小学四書語録』

劉因の詩は、北方に伝えられた朱子学の影響を受け、時に理屈っぽいと評されることもありますが、その根底にはしっかりとした骨格があります。

人物

劉因は、その学識の高さだけでなく、清廉潔白な人柄で多くの人々に尊敬されました。彼は、自らの信念を貫き、権力に媚びることなく、学問と教育に生涯を捧げました。彼の思想は、後世の学者たちに大きな影響を与え、元代を代表する儒学者の一人として、その名は歴史に刻まれています。

参考文献

『元史』巻171
『新元史』巻170
* 吉川幸次郎『元明詩概説』（岩波文庫、2006年）ISBN 978-4-00-331524-8

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