劉崇 (漢)

劉崇（りゅう すう）

劉崇は、前漢末期に生きた人物であり、安衆侯という地位にありました。彼は、王莽が前漢の実権を掌握したことに危機感を覚え、反乱を企てましたが、志半ばで倒れました。

生涯

劉崇は、漢の景帝の血を引く劉丹の六世の孫にあたり、漢の宗室の一員でした。彼は安衆侯の爵位を継承し、領地を治めていました。

当時の朝廷では、外戚の王莽が権勢を振るっており、国政をほしいままにしていました。元始5年（5年）12月、平帝が後継者を残さずに崩御すると、王莽は宣帝の玄孫である劉嬰を後継者に据えましたが、これはあくまで傀儡に過ぎませんでした。王莽は自らを「仮皇帝」や「摂皇帝」と称し、帝位簒奪の野心を露わにしていきました。

こうした状況に対し、世間では王莽が帝位を簒奪するのではないかという疑念が広まりました。劉崇もまた、王莽の専横を深く憂慮し、ついに挙兵を決意します。同年4月、劉崇は「王莽は朝政を壟断し、天下の民はこれを憎んでいる。今こそ立ち上がり、王莽を討つべきだ」と宣言し、自身の領地である安衆侯国で兵を挙げました。彼は、国相の張紹らとともに宛県へ侵攻を試みましたが、事前に察知され、あえなく敗北しました。

反乱の余波

劉崇の反乱は失敗に終わりましたが、その影響は小さくありませんでした。劉崇の親族である劉嘉と、張紹の従弟である張竦は、王莽に降伏し、罪を許されました。特に張竦は、王莽に取り入り、劉崇を非難する上奏文を代筆しました。その内容は、王莽の功績を称え、劉崇の罪を糾弾し、彼の邸宅を破壊すべきであるというものでした。

王莽は、張竦の書いた上奏文に大いに喜び、彼を列侯に封じました。また、劉嘉にも領地を与え、その子にも爵位を与えました。この一件は、長安の人々の間で「張竦に取り入れば列侯になれる」と噂されるほどの影響力を持ったとされています。

劉崇の邸宅は破壊され、その跡地は水たまりにされました。これは、王莽に反逆した者の末路を示す象徴的な出来事となりました。また、群臣たちは王莽に対し、より一層の権威を与え、天下を鎮めるように進言しました。

同年5月、王莽は太皇太后の詔を受け、朝廷で「仮皇帝」と称することを許されました。これにより、王莽の帝位簒奪への道は、さらに確実なものとなっていきました。

張竦は太守に任じられましたが、政治手腕は祖父に及ばず、その死後、張敞の後継者はいなくなってしまいました。

劉崇の反乱は、王莽による簒奪を阻止することはできませんでしたが、その抵抗は、王莽の支配に対する不満の表れとして、歴史に刻まれました。

参考文献

* 東晋次『王莽―儒家の理想に憑かれた男』（白帝社アジア史選書）、白帝社、2003.10

脚注

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