劉秉忠

劉秉忠（りゅう へいちゅう）

劉秉忠（1216年 - 1274年）は、元の時代の政治家です。元の名は侃（かん）、字は仲晦（ちゅうかい）、法号は子聡（しそう）と称しました。彼は邢州邢台県（現在の河北省邢台市）の出身で、本貫は瑞州にあります。

生涯

劉秉忠の父、劉潤は、チンギス・カンに仕え、邢州の録事を務めていました。劉秉忠は17歳の時、故郷の邢州節度使府の令史に任命されますが、官吏の仕事に興味を持てず、すぐに官を辞して出家しました。その後、雲中で臨済宗の海雲印簡禅師と出会い、その才能を認められます。海雲印簡禅師の推挙により、チンギス・カンの孫であるクビライに仕えることになり、行政面で重要な役割を担いました。1264年に還俗し、光禄大夫に任命され、姚枢（ようすう）と共にクビライのブレーンとして活躍します。元の国号の制定、漢風の制度を取り入れた王朝の整備、中統（ちゅうとう）という年号の制定、紙幣の発行による通貨政策、元の首都である大都の建設など、国家の重要な政策に深く関わりました。1274年、59歳で亡くなっています。

逸話

劉秉忠はクビライの片腕、そして最高の謀臣として知られていました。彼が亡くなってから約100年後、明の永楽帝のブレーンとなった姚広孝（ようこうこう）は、劉秉忠の生まれ変わりとまで言われたほどです。

クビライがモンケの家臣であった頃、彼の領地は河北にありました。そこには1万戸の民が暮らしていましたが、日ごとに民が減り続け、ついには700戸にまで減少してしまいました。この事態に驚いたクビライは、劉秉忠に調査を命じます。調査の結果、税を取り立てる責任者の行き過ぎが原因であることが判明しました。劉秉忠はクビライに「税を軽くし、賦役を減らすことで、戸数は自然に増えるでしょう」と進言しました。クビライが彼の進言に従ったところ、1年で戸数は数倍に増加しました。この出来事により、劉秉忠はクビライから非常に厚い信頼を得るようになったと言われています。

人脈

クビライが即位した直後の漢人官僚は、劉秉忠、許衡（きょこう）、王鶚（おうがく）の3つのグループに分類されていました。劉秉忠に代表される派閥は、建築、財務、監察など、行政的な実務に長けていた点が特徴です。劉秉忠らは思想的には許衡をはじめとする「儒林派（徳行派）」に近い立場でしたが、許衡が技術・数理的な知識を軽視し、「道を以て己が任となす」という考えを持っていたのに対し、劉秉忠らは実学を重視することで一線を画していました。また、劉秉忠は人材の推薦にも熱心で、以下の人物は彼の推挙を経てモンゴルに仕えるようになりました。

趙秉温（ちょうへいおん）
張文謙（ちょうぶんけん）
李徳輝（りとくき）
馬亨（ばこう）
程思廉（ていしれん）
王恂（おうじゅん）
郭守敬（かくしゅけい）
王文統（おうぶんとう）

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