劒岳 点の記

劒岳 点の記

『劒岳 点の記』は、日本の作家新田次郎による小説で、またそれを原作とした映画作品です。この物語は、明治時代末期に実際に行われた日本の山岳測量のプロジェクトを背景にしています。特に飛騨山脈の立山連峰での出来事に焦点を当て、男たちの信念と勇気が試される姿が描かれています。物語の主題は、日本地図を完成させるために、あらゆる困難に立ち向かう男性たちの奮闘です。

あらすじ

1906年（明治39年）、陸軍参謀本部陸地測量部にいる測量官、柴崎芳太郎に無名の山、剱岳への登頂及び測量の命令が下されました。この任務は、日本地図の最後の空白地帯を埋めるという極めて重要なもので、同時に非常に困難な挑戦でもありました。柴崎は、地元の山案内人とともに、危険な山岳信仰の影響を受けた地元住民たちの反発に直面しつつ、ガレ場や悪天候、雪崩などに苦しむ自然環境と戦うことになります。加えて、日本山岳会との登頂争いにも参加しなければなりません。そして、未発達な測量技術や登山装備といった様々なハードルを乗り越えなければなりません。

書籍と映画

この作品は、1977年に文藝春秋から出版され、1981年と2006年に文庫版も発行されています。映画版は、2009年6月20日に公開され、特に富山県では教育映画としての意義も持っていました。この映画は、日本を代表するカメラマンである木村大作が初めて監督した作品であり、撮影開始から完成までの過程は非常に厳しく、リアリティを追求したものでした。

制作過程

この映画の制作は、2007年の春から始まり、約200日にわたる撮影が行われました。撮影は、一部を順撮りで実施し、役者の感情を重視する手法が採られました。特に、実際の厳しい自然環境の中で撮影が行われることで、明治の測量官の目線と感覚をリアルに再現しました。撮影中は、厳しい気象条件も影響し、時には作業が中断されることもありましたが、撮影チームは忍耐強く作業を続け、結果として高水準な映像が完成しました。

登場人物とキャスト

物語には多くのキャラクターが登場し、それぞれの背景や個性が描かれています。浅野忠信が演じる柴崎は、測量士としての誇りを持ちながらもプレッシャーに悩む人物であり、香川照之演じる宇治は経験豊かな山案内人としての役割を果たしています。また、松田龍平が演じる生田は、仲間の大切さに気づいていく成長を示します。

受賞と評価

映画は特に、その映像美とリアリティを評価され、多くの映画祭での上映や受賞にもつながりました。また、映画の音楽も特筆すべき点で、仙台フィルハーモニー管弦楽団による生演奏が使用されるなど、視覚と聴覚の両面から観客の心を捉える工夫がなされています。自家用車を自ら運転して全国を巡り、試写会を行った木村氏の姿勢も注目されました。

まとめ

『劒岳 点の記』は、ただの測量物語を超え、人間としての成長と友情、そして自然に対する畏敬の念を描いた作品と言えるでしょう。男たちが困難に立ち向かう姿勢が、現代の私たちにも多くのことを教えてくれる内容になっています。

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