加瀬完

加瀬 完（かせ かん） - 政治家と教育者の歩み

加瀬完（1910年1月1日 - 1995年2月28日）は、日本の政治家であり、元参議院議員および参議院副議長を務めた。また、我孫子市名誉市民でもある。彼の生涯は、教育の現場で始まり、その後政治の舞台での活動に転じました。特に、成田国際空港建設計画に関する反対運動で多くの人々に知られています。

生い立ちと教育者としてのキャリア

加瀬は千葉県の匝瑳市に生まれ、1920年に千葉師範学校を卒業後、小学校と中学校での教員としての道を歩みました。教育現場での実績を評価され、県視学の鈴木迪彦の抜擢により1938年には我孫子第二小学校の校長に就任。その後、我孫子第一小学校と我孫子第一中学校の校長も歴任し、さらに千葉県教育委員会委員長という要職にも就きました。

彼は教育の民主化を目指し、1947年からは千葉県議会の議員として政治の舞台に進出。当初は無所属で、後に左派社会党に入党し、日本社会党に所属しました。1953年の参院選では見事当選を果たし、その後、1971年まで党の参議院議員会長を務めます。1977年には久しぶりに社会党から副議長に選出されるも、1979年には病のため辞任。彼の政治的キャリアは連続5期にわたる参議院議員選挙の当選という成果に結実しました。

成田空港問題における活動

加瀬の名前が特に知られるようになったのは、成田空港の建設に対する反対運動においてです。新東京国際空港の計画は千葉県の内陸部で進められていましたが、加瀬は「田中正造のように、絶対に飛行機を飛ばさせない」と地元住民とともに声を上げ、反対活動に奔走しました。彼は富里村へ100回以上通い、地域住民との対話を重ね、空港建設反対を訴えました。

彼は航空機の騒音問題や、農地の重要性を訴え、「防音林では計り知れない」といった具体的な論点を掲げて住民に理解を促しました。また、「富里に土地を持つ会」の設立にも関与し、地域の反対運動を強化しました。国会での質疑応答を通じて、空港問題の重要性を政界にも広めていったのです。

加瀬は自身の質問の中で、空港問題を教科書問題や天下り問題とともに国会史に残る爪痕と思っていました。結果的に、政府は空港の計画を縮小し、現在の成田空港の位置に変更せざるを得なくなりました。加瀬はこの過程での貢献を誇りに思っていました。

著作と功績

加瀬完は教育政策や空港問題に関する著作も数多く残しています。1956年に発表した『暗い明日―教委法改正の後に来るもの』や、教科書に関する著書『教科書検定』（1960年）、さらに空港建設問題を綴った『まぼろしの国際空港 : 「富里」のたたかいの記録』（1966年）は、彼の思想や活動を知る上で貴重な資料となっています。

1995年2月28日、加瀬は85歳でその生涯を閉じました。彼の教育者としての情熱と政治家としての活動は、多くの人々に影響を与え、地元コミュニティにおける運動に今なお継承されています。

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