加瀬次郎

加瀬次郎：不屈の柔道家、その軌跡

加瀬次郎（かせ じろう、1954年12月27日 - ）は、東京都出身の元柔道家であり、現在は講道館指導員、京葉ガス柔道部部長として活躍しています。柔道八段の段位を持ち、その指導力と実績は高く評価されています。

幼少期から柔道との出会い

墨田区で4人兄妹の末っ子として生まれた加瀬は、小学校4年生の時、親戚の兄の影響で柔道に興味を持ちます。父の勧めで講道館へ入門し、柔道の道へ足を踏み入れました。週に3、4日講道館で稽古に励む傍ら、相撲にも取り組んでいました。

中学校時代も柔道と相撲を両立していましたが、腕力に優れていた加瀬は相撲で好成績を収め、強豪高校からスカウトされるほどでした。しかし、裸で行う相撲の寒さや、体の密着した体捌きが苦手だったため、相撲の道を断念します。

吾嬬第二中学校時代には、腕相撲の東京都大会（団体戦）で優勝するなどの成績を残しましたが、柔道では都大会ベスト8止まりと、目立つ存在ではありませんでした。当時の加瀬は、将来船の船長を夢見る、ごく普通の中学生でした。

修徳高校での飛躍

転機が訪れたのは、近隣県からチャンピオンが集まる超強豪校・修徳高校の田渕裕己監督からのスカウトでした。「お前も欲しい」という言葉に惹かれ、修徳高校柔道部へ入部を決意します。

高校時代の稽古は想像を絶する厳しさでした。合宿では夜中に起こされて稽古をさせられたり、「お前たちは稽古だけしてればいい」と修学旅行にも行かせてもらえませんでした。しかし、この猛稽古が実を結び、高校3年生の時には都大会個人戦で優勝、インターハイに出場を果たします。しかし、大会直前に急性虫垂炎で開腹手術を受けた影響もあり、インターハイではベスト8に終わりました。

明治大学での成長

1973年、加瀬は田渕監督の母校である明治大学に入学します。大学では、後に世界選手権で銀メダルを獲得する原吉実らと切磋琢磨し、実力を磨きました。大学2年生の時には団体戦のレギュラーの座を獲得し、プライベートではTXN系列の人気深夜番組『勝ち抜き腕相撲』で、当時最高の17人抜きを達成しました。しかも、胃癌の疑いで胃の4/5を摘出した療養中での快挙でした。

大学4年生の1976年には、柔道部主将として全日本学生体重別選手権で全国優勝を果たし、講道館で開催された第1回講道館杯でも準優勝に輝きました。

京葉ガスでの活躍

1977年、加瀬は明治大学を卒業し、明大OBの鳥海又五郎の勧めで京葉ガスに入社します。同社では全柔連強化選手の採用は初めてでした。入社1年目に全日本実業選手権の1部で個人優勝を果たすと、入社2年目には万年2部であった柔道部を1部に昇格させる原動力となりました。加瀬は当時を振り返り、「仕事は午前のみで午後は稽古という生活を送る自分に対し当初は社内の風当たりも強かったが、結果を残すにつれ社内でも応援してくれる人が増えていった」と述べています。

1980年・1981年と太平洋選手権で個人優勝。また国内の大会でも存在感を示し、1980年4月の全日本選手権では中量級の体格ながらベスト8に入る健闘を見せました。翌81年には、講道館杯の決勝戦で日蔭暢年を破り優勝、全日本選抜体重別選手権でも決勝で新和巳を下し優勝し、同年の世界選手権で日本代表の座を射止めました。

世界選手権での銀メダル

オランダのマーストリヒトで開催された世界選手権では、初戦で負傷するという不運に見舞われます。しかし、加瀬は痛みを堪えながらも勝ち進み、決勝戦でイギリスのニール・アダムスと対戦。腕挫十字固で一本負けを喫し、銀メダルに終わりました。この大会について加瀬は「初戦でケガをした時点で負けていた」と語っています。

世界選手権後も中量級の第一人者として全日本選抜体重別選手権・講道館等で活躍したほか、主将として京葉ガス柔道部を牽引し、選手・監督・マネージャーの1人3役をこなしていました。1986年の全日本実業団体戦（1部）では、それまで同大会を6連覇していた新日本製鐵を決勝で破り、1部昇格8年目にして念願の初優勝を果たしました。翌87年には連覇を達成しています。

引退後

引退後は、京葉ガスや講道館にて後進の指導にあたっています。現役時代を振り返り、「大きくない体格ながら（体重無差別の）全日本選手権に5回も出場できた事が最大の誇りです」と述べています。

加瀬次郎の柔道人生は、決して平坦な道ではありませんでした。数々の困難を乗り越え、常に高みを目指し続けたその姿は、多くの人々に勇気と感動を与えています。

主な戦績

1976年 - 講道館杯（78kg級） 2位
1976年 - 全日本学生体重別選手権（78kg級） 優勝
1977年 - 全日本実業個人選手権（1部） 優勝
1979年 - 全日本選抜体重別選手権（78kg級） 3位
1979年 - 講道館杯（78kg級） 2位
1980年 - 全日本選抜体重別選手権（78kg級） 3位
1980年 - 講道館杯（78kg級） 3位
1981年 - 世界選手権（78kg級） 2位
1981年 - 全日本選抜体重別選手権（78kg級） 優勝
1981年 - 講道館杯（78kg級） 優勝
1982年 - 全日本実業個人選手権（3部） 優勝
1983年 - 全日本選抜体重別選手権（78kg級） 2位
1983年 - 講道館杯（78kg級） 2位
1984年 - 全日本選抜体重別選手権（78kg級） 3位
1984年 - 講道館杯（78kg級） 優勝
1985年 - 全日本実業個人選手権（2部） 優勝

加瀬次郎 - JudoInside.com のプロフィール（英語）

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