加納輝石

加納輝石：北海道で発見された希少鉱物

加納輝石(Kanoite)は、珪酸塩鉱物の一種であり、単斜輝石グループに分類される希少な鉱物です。化学組成式は(Mn²⁺, Mg)²Si₂O₆、またはMnMgSi₂O₆と表されます。

この鉱物は、1977年に島根大学の小林英夫氏によって、北海道熊石町館平（現在の八雲町）で発見されました。そして、秋田大学の岩石学者であった加納博氏に因んで命名されました。模式地では、園石やテフロ石といった他の鉱物層に挟まれた、ピンク色を帯びた薄い褐色の層として産出しており、肉眼では確認しづらいものの、顕微鏡下では小さな結晶を確認できます。モース硬度は6、比重は3.66、結晶系は単斜晶系です。

加納輝石の発見以前には、MnMgSi₂O₆を構成成分とする物質は、MgSiO₃-MnSiO₃系の合成実験において人工的に生成されていました。しかし、加納輝石の発見によって、この物質が天然にも存在することが初めて確認されました。その結晶構造は、これら先行する合成実験の知見を基に解析されています。

興味深いことに、加納輝石の化学組成においてマグネシウムの割合が増加すると、加納輝石と共に(Mg,Mn)MgSi₂O₆という組成の鉱物が生成されます。この鉱物は、1984年にアメリカ合衆国で発見され、ドンピーコー輝石(Donpeacorite)と命名されました。その後、1986年には、加納輝石の原産地である北海道八雲町館平においてもドンピーコー輝石の存在が確認されています。

このように、加納輝石は、その発見経緯や関連鉱物との関係性、そして合成実験との関連性など、多くの点で注目に値する鉱物です。その希少性と学術的な重要性から、鉱物学研究において重要な役割を果たしています。今後も、加納輝石に関する研究は、鉱物生成に関する理解を深める上で重要な貢献をするものと期待されています。加納輝石に関するより詳細な情報は、鉱物データベースサイトmindat.orgなどを参照ください。

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