熊石町

熊石町：日本海の恵みと歴史を刻んだ町

北海道南西部の檜山支庁中部に位置していた熊石町は、日本海に面した町として知られていました。2005年10月1日、渡島支庁管内の八雲町との合併により、二海郡八雲町の一部となり、檜山支庁は南北に分断されることとなりました。

町名の由来と地理

町名はアイヌ語の「クマウシ」（魚を乾かす竿のあるところ）に由来しており、古くから漁業が盛んに行われていたことを示唆しています。地理的には、南西は日本海、北東は遊楽部岳などの山々に囲まれた、平地が少なく森林に覆われた山岳地帯が大部分を占めていました。幾つかの河川が山岳地帯から日本海へと流れ込み、その河口部に集落が形成されていました。特に、日本海の海岸線は岩礁地帯が広がり、その独特の景観は道立自然公園に指定されるほど美しいものでした。

主な山としては、遊楽部岳（1,277m）、白水岳（1,136m）、雄鉾山（999m）などがあり、河川は関内川、平田内川、見市川、冷水川、相沼内川などがありました。立待岬など、特徴的な地形も存在していました。隣接自治体としては、檜山支庁の乙部町、せたな町、渡島支庁の八雲町がありました。

歴史の軌跡

熊石の歴史は古く、1691年（元禄4年）には番所が設置され、当時の和人地の最北端となりました。その後、和人地は後志国や胆振国山越郡へと拡大していきます。1741年（寛保元年）には渡島大島の噴火による津波の被害を受けましたが、1744年（延享元年）に村が再建され、ニシン漁が盛んになるなど発展を遂げました。

その後、天領となる時期や松前藩領となる時期を繰り返し、1855年（安政2年）には再び天領となり、津軽藩が警固にあたりました。幕末には見市温泉が発見されるなど、様々な出来事が町の歴史を彩ってきました。

1873年（明治6年）には熊石、泊川、相沼に戸長役場が設置され、1902年（明治35年）には北海道二級町村制施行により、熊石村、相沼内村、泊川村の区域をもって熊石村が発足しました。この頃からニシン漁は衰退に向かいますが、1940年（昭和15年）には3大字を廃止し、16行政字に再編されました。1959年（昭和34年）には宮古島台風による甚大な被害を受けましたが、1960年（昭和35年）には人口がピーク（10,049人）に達しました。1962年（昭和37年）には町制施行により熊石町となりました。そして、2005年（平成17年）、八雲町との合併により、熊石町の歴史は幕を閉じました。

経済と産業

熊石町の経済は、古くから水産業が中心でした。イカやアワビなどの水産資源に恵まれ、熊石漁港は重要な役割を果たしていました。

教育、交通

教育施設としては、北海道熊石高等学校、熊石第一中学校、熊石第二中学校、相沼小学校、雲石小学校、関内小学校、泊川小学校などがありました。町内には鉄道路線は通っておらず、最寄りの駅はJR北海道函館本線八雲駅でした。交通手段としては、函館バスや国道229号、国道277号が利用されていました。

観光と文化

観光スポットとしては、奇岩雲石、霊場門昌庵、木喰仏（門昌庵）、熊石歴史記念館、円空上人滞洞跡などが挙げられます。また、あわびの里フェスティバル（5月）や根崎神社例大祭（8月）など、地域独特の祭事や催事も行われていました。

著名な出身者

熊石町からは、俳優の伊吹吾郎氏、政治家・実業家の荒井幸作氏、漫画家の余湖裕輝氏など、多くの著名人が輩出しています。

熊石町は、豊かな自然、歴史、そして人々の営みによって形成された、魅力的な町でした。その歴史と文化は、今なお人々の記憶の中に生き続けています。

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