加藤唯史

加藤 唯史

加藤 唯史（かとう ただし、本名：加藤 正、1949年2月17日 - 2017年10月15日）は、日本の漫画家。北海道函館市の出身です。

高校を卒業した後、上京して漫画家への道を志しました。最初はアメリカへの移住を考える時期もあり、新聞配達のアルバイトで生計を立てながら英会話学校に通うといった経験もしています。しかし、やがてその進路を変更し、漫画家・棚下照生のもとで約3年間にわたりアシスタントとして漫画制作の基礎を学びました。

漫画家としての本格的なデビューは1973年のことです。この年、貸本雑誌『劇画No.1』（東考社）に掲載された作品『妖かしの森』で世に出ました。このデビュー当時は、ペンネームではなく本名の加藤正名義を使用していました。デビュー後は、活動の場を少年誌へと移し、その後は青年誌でも数多くの連載作品を発表していきます。

そのキャリアの中で特に代表的な作品として挙げられるのが、グルメ漫画の金字塔とも言われる『ザ・シェフ』です。この作品は、日本文芸社の『漫画ゴラク』にて1985年から連載が開始され、瞬く間に人気を博しました。天才的な料理人・味沢匠の活躍を描いたこの作品は、読者からの熱狂的な支持を得て、後にテレビドラマ化もされるなど、大きなヒットとなりました。その後も『ザ・シェフ〜新章〜』、『ザ・シェフ・ファイナル』といった続編が制作され、長きにわたり愛されるシリーズとなりました。

もう一つの代表作である『ロン先生の虫眼鏡』は、秋田書店の『週刊少年チャンピオン』にて1978年から連載されました。光瀬龍が原作を手がけたこの作品は、昆虫研究をテーマにした教育的な側面も持つ異色の漫画でした。当時の『週刊少年チャンピオン』は『がきデカ』などのギャグ漫画が全盛期を迎えていましたが、その中で『ロン先生の虫眼鏡』は独自の存在感を放ち、読者や関係者から「同誌の唯一の良心」と評されることもあったと言われています。この作品は後に『月刊少年チャンピオン』へと移籍し、引き続き連載されました。

加藤唯史は、これらの代表作の他にも、幅広いジャンルの作品を手がけています。少年誌時代には『週刊少年ジャンプ』にて原作付きの『サテライトの虹』や『闇の逃亡医』を発表しています。また、小学館の『ホットDOC』（原作：きむらはじめ）や、集英社の『だめだよ!木原ちゃん』（原作：矢島正雄）など、医療ものやコメディなど多岐にわたる作品を生み出しました。

青年誌やその他雑誌では、日本文芸社から『KACHIRI』、『ヤメ検弁護士シャチ』、『グルメ探偵りょうじ』（『食漫』掲載）といった作品を発表。さらに、『漫画ゴラク』では、加藤宗名義で『占師サダム』を不定期連載するなど、様々な名義や媒体で精力的に活動を続けました。NHKのドキュメンタリー番組を漫画化した『プロジェクトX 挑戦者たち 「82億食の奇跡」 魔法のラーメン〈日清カップヌードル〉』（宙出版）といった企画ものも手がけています。

多くの作品を生み出す傍ら、彼のもとでアシスタントを務めた漫画家もおり、渡辺保裕氏やあろひろし氏などが名を連ねています。

2017年10月15日、病のため惜しまれつつ逝去されました。しかし、その死は遺族の意向により、しばらくの間公にされませんでした。約1年半後の2019年5月になって初めてその事実が発表され、多くのファンが別れを惜しみました。

加藤唯史は、グルメ、医療、教育、ミステリー、人情ドラマなど、ジャンルを問わない多様なテーマを扱い、読者に感動や学び、そしてエンターテインメントを提供し続けた漫画家でした。その作品は今も多くの読者に読み継がれています。

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