加藤日出男

加藤日出男（かとうひでお、1929年 8月31日 - 2019年 12月22日）は、日本の社会運動家であり、多数の随筆を残した人物です。特に、高度経済成長期に地方から都市へと集団就職で出てきた若い勤労者たちのための交流の場として「若い根っこの会」を設立し、亡くなるまでその活動を主導しました。

生い立ちと学歴

秋田県秋田市に生まれた加藤は、秋田県立秋田中学校（現在の秋田県立秋田高等学校）を経て、1946年に秋田鉱山専門学校（現在の秋田大学）に入学しますが、一年足らずで中退します。その後しばらく、住み込みで農業に従事していましたが、1953年には東京農業大学農学部農業経済学科を卒業しました。大学在学中には、特定の応援スタイルとして知られる「大根踊り」を考案したという説がありますが、これには異論も存在します（詳細は「青山ほとり」の項目を参照）。

「若い根っこの会」の設立と発展

東京農業大学在学中の1952年から1958年にかけて、「あすなろ会」をはじめとする複数の学生サークルや、若者のための交流サークル「経堂青年会」「雑草の会」「東京青年の会」を次々と立ち上げました。これらのサークルでの経験をまとめた初の著書『東京の若い根っこたちある青年団長の手記』を1957年に発表。この作品は後にテレビドラマ化され、注目を集めました。

1959年、加藤はそれまでに設立した「経堂青年会」「雑草の会」「東京青年の会」などを統合・再編し、地方出身の勤労青年を主な対象とした「若い根っこの会」を正式に結成します。活動の拡大に伴い、財界からの支援も得て、1961年4月には活動拠点となる施設「根っこの家」を埼玉県川越市に開設。同年9月には財団法人としての認可も受け、活動基盤を固めました。

会の出版部門として、1961年11月には株式会社根っこ文庫（後に社名変更）を設立。同年、機関誌『若い根っこ』を創刊し、翌1962年からは出版取次を通して全国へと配布範囲を広げました。

活動の最盛期と社会との関わり

これらの活動拡大は、会員数の急増を招きました。「若い根っこの会」は1960年代前半から中頃にかけて全盛期を迎え、当時の勤労青年向けサークルとしては最大規模を誇るまでになります。最盛期には公称で3万2000人の会員を擁し、加藤本人の主張では行事参加者を含め10万人規模に達したとされます。

若い根っこの会は、政治や宗教に対して特定の立場を取らない不偏不党の方針を掲げていました。しかし、同時期に活動が活発だった創価学会や日本民主青年同盟など、若者を対象とする他の団体と活動対象層が重なる部分があり、会員がそちらへ移るケースも少なくなかったと言われています。非暴力的な手法を重視していた加藤は、そうした状況に危機感を抱き、1960年代初頭からは民主社会党（民社党）、特にその中心人物であった西尾末広への個人的な支持を公に表明。西尾の伝記も執筆しています。

これはあくまで加藤個人の立場からの表明であり、組織全体としての政治的偏りを示すものではありませんでしたが、会の中にも民社党への関心を持つ者が増える傾向が見られました。一方で、会の集会に民社党の候補者が訪れるなど、活動に影響が出る場面も見られ、加藤自身が懸念を表明することもあったようです。

会の活動以外では、1972年から2007年にかけて、国際的な教育と戦没者慰霊を目的とした洋上イベント「グアム・サイパン南十字星洋上大学」を企画・開催しました。

晩年

長年にわたる社会貢献が認められ、1986年には藍綬褒章を受章しています。また、母校である東京農業大学の学校法人評議員も務めました。

加藤日出男は、2019年 12月22日、老衰により90歳で永眠しました。墓所は東京都府中市の多磨霊園にあります。

加藤は生涯を通じて、若者の悩みや孤独に寄り添い、生きる意味や友情の大切さを説き続けました。そのメッセージは、多くの著書を通して今なお読み継がれています。

主な著作（一部）

- 『東京の若い根っこたちある青年団長の手記』第二書房, 1957年
- 『根っこ』トモブック社, 1960年
- 『友情行進曲嵐の中の若者たち』東京信友社, 1960年
- 『根づよく生きるぞ』実業之日本社, 1964年
- 『生きるぞ!雑草のように若い根っこの生活記録』サンケイ新聞出版局, 1965年
- 『風雪の人西尾末広』根っこ文庫太陽社, 1966年
- 『若者を感動させる経営人材を育てるにはこれしかない』日本労政調査会, 1968年
- 『勇気を燃やす人生論劣等感をぶち破る』大和書房, 1969年
- 『愛と荒野を生きる』PHP研究所, 1974年
- 『大根踊り人生論』東京農業大学出版会, 2003年
- 『生涯青春いのちよ、ありがとう』清流出版, 2007年

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