出版取次

出版取次とは

出版取次は、出版社と書店の間で流通する商品を取り扱う業者を指し、日本独自の流通システムを構築しています。この仕組みの中で、取次は出版社と書店の関係を円滑にする役割を果たしており、取次自身が商品の卸売と小売を仲介しています。これにより、出版社は在庫リスクを負わず、書店は商品を売れ残ることなく取り扱うことができます。

機能と業務内容

出版取次は単なる流通業者としての機能にとどまらず、多くの業務を抱えています。例えば、取次は書店からの注文に基づいて商品の配本や返品を管理し、代金の回収も担当します。これは、20世紀の出版業界において多種多様な商品を扱うことに伴う、個別取引や在庫管理の複雑さを軽減するために確立されたシステムです。

書店が求める数が出版社の発行部数を上回る場合、取次が各書店に対して適切な数量を調整し、流通の安定性を保つ役割を果たします。また、書店に対する販売促進策や品揃えの提案、出版社に向けた市場動向に即した助言など、コンサルティング機能も持ち合わせています。さらに、取次は書店や出版社に対する代金回収の繰り延べや、メーカーへの委託販売代金の予想払などの金融機能も果たします。

一方で、取次の仕組みには問題も存在します。特に中小出版社や書店が多数存在する日本の出版業界では、取次主導のシステムが横並びの競争を阻害し、市場の多様性を狭める懸念があります。時には取次が一方的な要求をし、その結果公正取引の観点から問題にされることもあるのです。

歴史的背景

出版取次の歴史は明治時代から始まり、当初は出版社と書店が取次業務も兼業していました。しかし、大正時代に入り雑誌の購読が増えるとともに、専業の取次が現れ始め、多様な流通形態に分化しました。戦後の1949年に新たに設立された取次会社が、この業界の基盤を固めていきます。

この過程で、日本では返品制や定価販売制のような独自の流通制度も整備されました。これにより、大量生産や流通が可能になり、出版業界の成長を支えました。しかし、価格競争が少ないため流通の効率化が遅れ、書店の過剰出店の原因にもなりました。

近年では、インターネット書店の登場や電子書籍の普及にともない、出版取次のあり方も影響を受けています。大手出版社が自社で流通を試みる中で、取次の重要性が再評価されつつあります。例えば、KADOKAWAは新たに直接書店へ配送する部門の立ち上げを予定しているなど、業界は変化の時を迎えています。

主な取次会社

現在、日本にはいくつかの主要な出版取次会社があります。特にトーハンと日本出版販売（日販）が業界のシェアの70%以上を占める二大取次として知られています。これに続くのが楽天ブックスネットワークなどで、彼らは多様な出版物を扱い、流通の安定を図っています。

また、教育機関や公共図書館向けには専用の取次業務が行われ、地域の書店と連携した流通も確立されています。さらに、電子書籍に特化した取次も登場しており、出版社がデジタルコンテンツの流通を効率的に進める支援を行っています。

結論

出版取次は日本の出版業界において欠かせない役割を果たしており、時代の変化に伴いその機能やシステムも進化しています。しかし、業界全体の流通システムの効率化や価格競争の促進は今後の課題であり、取次業者の役割も再考を要する局面にあります。これからの出版流通の在り方は、より柔軟で多様性を持ったものになることが期待されています。

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