加藤泰秋

加藤泰秋：激動の時代を生き抜いた大名から宮内官僚、そして山草研究家へ

加藤泰秋は、江戸時代後期から大正時代にかけて活躍した稀代のマルチタレントでした。伊予国大洲藩の第13代にして最後の藩主として、そして宮内官僚、貴族院議員、さらには山草研究家として、数々の顔を持つ人物です。彼の生涯は、激動の時代を生き抜き、様々な立場から日本近代史に貢献した物語と言えるでしょう。

加藤泰秋は、弘化3年（1846年）、大洲藩11代藩主・加藤泰幹の四男として誕生しました。幼名は廉之進。元治元年（1864年）、兄の泰祉が急逝したことにより、わずか20歳で家督を継承することになります。

当時、大洲藩は財政難に苦しんでいました。泰秋は、大胆な財政改革に着手。倹約政策を推進し、家臣の知行削減も断行するなど、苦渋の決断を繰り返しながら藩の立て直しに尽力しました。その甲斐あって、財政は徐々に安定し、軍備増強も可能になりました。慶応2年（1866年）には、窮民救済にも着手するなど、藩主としての責務を全うしようとしました。

尊王攘夷の志士であった泰秋は、小御所会議では軍勢を率いて御所の警備にあたり、鳥羽・伏見の戦いでは、長州藩兵を摂津西宮に密かに上陸させるなど、新政府側に協力しました。戊辰戦争においても、武成隊による甲府城警備や奥羽討伐に貢献するなど、重要な役割を担い、明治維新に大きく貢献しました。明治天皇の東京遷都に際しては、行幸行列の前衛を務める栄誉に浴しました。

版籍奉還（1869年）により藩知事となり、廃藩置県（1871年）で辞職した後も、泰秋は国家に貢献する道を歩み続けました。明治17年（1884年）には子爵に叙爵され、明治44年（1911年）には貴族院子爵議員に当選。大正7年（1918年）までその職に就きました。さらに、大正時代には、明治天皇に仕えた山岡鉄舟の後を継ぎ、大正天皇の侍従として仕えました。

公務の傍ら、泰秋は山草研究にも情熱を注いでいました。その深い造詣は、多くの関係者に知られていました。

私生活においては、山内豊資の養女で徳大寺公純の娘である福子を妻に迎えました。この福子は西園寺公望の姉であり、その縁から、泰秋は神奈川県国府津に別荘を所有していました。西園寺公望はたびたびこの別荘を訪れたことから、「西園寺別荘」と呼ばれていました。

晩年、泰秋は81歳でこの世を去りました。その生涯は、藩主としての重責、新政府への貢献、宮内官僚としての務め、そして山草研究家としての活動と、多岐に渡るものでした。彼は、激動の時代を生き抜き、時代の変化に柔軟に対応しながら、自らの信念を貫き通した稀有な存在だったと言えるでしょう。彼の墓所は大洲市西山根の曹渓院にあります。彼の功績は、今もなお、人々の記憶に刻まれています。

系譜
彼の家族についても触れておきます。父は加藤泰幹、母は雲林院、養父は加藤泰祉です。妻は福子、そして多くの子供たちをもうけました。その中には、政治家や実業家として活躍した人物もいます。これらの子供たちや孫たちは、それぞれの道を歩み、泰秋の血筋を受け継ぎました。

参考文献
『貴族院要覧（丙）』昭和21年12月増訂、貴族院事務局、1947年
衆議院・参議院編『議会制度百年史 - 貴族院・参議院議員名鑑』大蔵省印刷局、1990年
* 霞会館華族家系大成編輯委員会『平成新修旧[[華族家系大成]] 上巻』霞会館、1996年

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