加藤近代美術館

加藤近代美術館の概要

加藤近代美術館（かとうきんだいびじゅつかん）は、埼玉県秩父市に位置していた私立の美術館です。1982年4月に開館し、約20年間にわたり、現代美術を中心に多くの作品を展示していましたが、2001年9月に一時休館し、翌年の春に閉館しました。この美術館は、加藤卓二氏の収集したアートコレクションを主に展示することで知られていました。

所蔵品について

美術館では、アメリカの画家アンドリュー・ワイエスの作品を中心に、フランスのルノアールやエドヴァルド・ムンク、日本の岸田劉生や梅原龍三郎、さらには黒田清輝や坂本繁二郎といった著名なアーティストの作品が展示されていました。現代の作家では、絹谷幸二や奥谷博の作品もあり、さらに彫刻作品では柳原義達や舟越保武の作品もありました。また、ワイエスの父、N.C.ワイエスによる挿絵作品も展示されていました。特にワイエスの作品は多くの観客に親しまれ、「ビューティー・マーク」や「海辺の猟犬」、「決闘」などの著名な作品がそのコレクションに含まれていました。

加藤近代美術館の閉館によって、この美術館に所蔵されていたワイエスの作品のいくつかは散逸してしまいましたが、その中の一つである「ビューティー・マーク」が名古屋の画廊「ギャラリー・タカミ」で再発見され、その後2008年には同画廊で特別なワイエス展が開催されることとなりました。

建物の歴史

美術館が設置されていた建物は、もともと秩父銘仙の問屋として機能していた柿原商店の建物で、1916年に建設されたものです。この建物は美術館になる前には秩父織物組合の事務所としても利用されていました。開館にあたり1981年には内部の一部が改装され、特有の土蔵スタイルのギャラリーが形成されました。

加藤近代美術館の閉館後、2002年にはその建物が国の登録有形文化財として認定され、秩父市によって取得されました。2004年には「秩父ふるさと館」という名称で新たな文化施設として開館し、地域の文化・観光の場として活用されています。

資料と情報

加藤近代美術館に関する資料には、1991年5月1日に発行された図版『加藤近代美術館』（TAKUJI KATO MODERN ART MUSEUM）があります。この資料は、監修を本間正義氏が担当し、作品解説を美術史家の清水敏男氏が手がけています。また、制作は集巧社によるもので、加藤近代美術館の歴史とコレクションを知るうえで重要な情報源となっています。

加藤近代美術館は、短い活動期間ではありましたが、その秀逸なコレクションと独特の建築で、訪れる人々に深い感銘を与えていました。その貴重な財産は、地域社会の文化を豊かにする上での重要な役割を果たしています。

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