加賀岩内駅

加賀岩内駅

かつて石川県能美郡辰口町岩内（現在の能美市岩内町）に位置していた、北陸鉄道能美線の廃駅。地域にとって重要な交通拠点でした。

概要

加賀岩内駅は、国有鉄道（開業当時は省線）との連絡運輸を行う連帯駅としての役割を担っていました。駅名には旧国名である「加賀」が冠されていますが、これは読みが同じだった国有鉄道岩内線の岩内駅との混同を避けるための措置でした。この駅は、近隣に存在したマッサージ店へ通う利用者のために国有鉄道線からの連絡乗車券が販売されており、能美線内の各駅と比較しても、特にこの連絡乗車券の販売実績が最も多かった時期もあったという、特異な側面を持っていました。
また、駅員が二名常駐する有人駅であった時代には、貨物取扱設備も併設されており、米や麦といった農産物、藁製品、肥料、さらには織物製品など、地域で生産・利用される多岐にわたる物品の積み降ろしが行われ、駅周辺は活況を呈していました。

歴史

加賀岩内駅の歩みは、以下の通りです。

1925年（大正14年）6月5日: 能美電気鉄道の駅として、「岩内駅」の名称で開業しました。この時点では、国有鉄道との連絡運輸は行っていませんでした。
1938年（昭和13年）10月27日（届出）: 駅施設の改良が行われました。ホームの擁壁が木造からコンクリート製に変更され、ホーム長も9.144メートルから15メートルへと延伸され、輸送力の向上に対応しました。
1939年（昭和14年）8月1日: 地域の交通事業者再編の流れの中で、金沢電気軌道が能美電気鉄道を吸収合併し、岩内駅は金沢電気軌道の駅となりました。
1941年（昭和16年）8月1日: 電力事業と交通事業の統合が進む中、北陸合同電気（現在の北陸電力の前身）が金沢電気軌道を合併しました。
1942年（昭和17年）3月26日: 事業譲渡により、駅の運営は北陸鉄道へと引き継がれました。
1946年（昭和21年）以降: 駅名が現在の「加賀岩内駅」に改称されました。この時期から、国有鉄道との間の連絡運輸が開始され、その重要性が増しました。
1967年（昭和42年）1月14日: 貨物側線が廃止され、貨物取扱業務が終了しました。これに伴い、駅は無人化されました。
1980年（昭和55年）9月14日: 北陸鉄道能美線自体の廃止に伴い、加賀岩内駅もその歴史に幕を閉じ、廃駅となりました。

駅構造

能美線の駅の中では比較的大きな駅として設計されていました。全盛期には、貨物列車用の側線も複数有する構造でしたが、末期には貨物取扱が廃止されたため、単式ホーム一面のみを持つ一線スルーではない地上駅となっていました。駅舎は木造の建物が併設されており、かつての賑わいを偲ばせる佇まいでした。

駅周辺と現状

駅周辺には、岩内体育館や岩内保育園といった公共施設が立地していました。
鉄道廃止から時を経て、加賀岩内駅の跡地は地域住民のための公園として整備され、再活用されています。駅が存在したことを示す記念碑が建立されており、かつての駅の面影をわずかに伝えています。ただし、隣の火釜駅方面へ続く旧線路敷は、周辺の水田の区画整理が進んだことにより、その正確な位置や跡を特定することが難しい状況となっています。

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