加賀谷朝蔵

加賀谷 朝蔵（かがや あさぞう）

加賀谷朝蔵は、1886年（明治19年）3月15日にこの世に生を受け、1981年（昭和56年）3月3日にその生涯を終えた人物です。日本の内務省や警察組織で要職を歴任した官僚であり、後に地方政治家として秋田市や京都市の首長を務めました。

生い立ちと官界への道

彼の出身地は秋田県です。地元の名家である加賀谷長右衛門の次男として育ちました。第二高等学校を卒業後、高等教育機関である東京帝国大学へ進学し、法科大学にて経済学を修め、1912年に卒業しました。翌年の1913年11月には、将来のキャリアを決定づける文官高等試験の行政科に見事合格。この成功を機に、内務省へと入省し、最初の勤務地として新潟県に赴任、県属としてのキャリアをスタートさせました。

内務官僚としての軌跡

内務省に入省後、加賀谷は多岐にわたる職務を経験しました。新潟県では西頸城郡、魚沼郡、中蒲原郡と、複数の郡で郡長を務め、地方行政の実務を深く学びました。その後、宮城県に異動し理事官として行政運営に携わります。また、警察行政にも深く関与し、警察講習所では教鞭を執り、後進の指導にあたりました。岩手県では警察部長として県の治安維持を担い、さらに皇宮警察長という重要な役職も経験しました。これらの経験を通じて、彼は幅広い視野と実務能力を養いました。晩年には静岡県や徳島県で書記官、内務部長を歴任するなど、地方行政の中枢において要職を歴重ね、行政官としての確固たる地位を築き上げました。1935年、長きにわたる官僚生活に区切りをつけ、退官します。

政治家への転身

官僚退官後、加賀谷は政治の世界に足を踏み入れます。1936年には京都市の助役に就任し、市政運営の補佐にあたりました。そして、1940年6月8日からは京都市長に就任し、約2年間にわたり市政のトップとして辣腕を振るいました。京都市長在任中には、懸案であった横大路ゴミ焼却場の操業開始を実現し、京阪電鉄の三条・五条間における市報償金問題の解決に力を尽くすなど、具体的な成果を挙げました。京都市長を1942年6月22日に退任した後、同年9月23日には故郷である秋田県の県庁所在地、秋田市の市長に就任しました。秋田市長としては、第二次世界大戦という激動の時代の真っただ中で市政を担い、戦時下の困難な状況に対応するため、その手腕を発揮しました。終戦直後の1945年9月22日に秋田市長を退任しました。

戦後とその後

終戦後、彼は公職追放の対象となりましたが、その後、秋田県公安委員長として再び公の職に就き、戦後の混乱期における県の公安維持に貢献しました。また、彼は翻訳活動も行っており、アーサー・ウツヅ氏の著書『民衆ト警察』の訳書を1927年に帝国講学会から刊行しています。これは、警察と市民との関係性に関する彼の関心を示すものです。

加賀谷朝蔵は、内務官僚として全国各地の行政・警察組織に貢献し、さらに戦中という困難な時期に二つの主要都市の市長として市政を担った、波乱に富んだ生涯を送った人物と言えるでしょう。

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