加野厚志

加野厚志

加野厚志（かの あつし）は、1945年12月20日に旧満州国の奉天で生を受けた、日本の著名な時代小説家、歴史小説家です。本名は加藤厚（かとう あつし）といい、主に日本の歴史や時代背景を舞台にした作品で知られています。多様な作品を生み出し、読者を歴史の深淵へと誘う語り口で多くの支持を得ています。また、社団法人・日本推理作家協会の会員でもあります。作家の阿野冠氏は、加野厚志氏の息子にあたります。

略歴

1945年に満州で生まれた後、日本へ引き揚げて育ちます。日本大学文理学部に進学しますが、後に中途退学します。大学を離れてからは、港湾での労働者や漫才師など、非常に多岐にわたる職業を経験しました。これらの異色の経歴は、その後の作家活動において、様々な階層の人間の描写や、社会の裏側を描く際のリアリティに独自の深みをもたらしたと考えられます。

昭和50年（1975年）、29歳を迎えた秋、加野厚志は小説『天国の番人』で第41回オール讀物新人賞を受賞し、小説家として正式にデビューを果たします。この受賞は、それまでの様々な経験を経てたどり着いた作家への道を確固たるものとしました。文壇デビュー後もその活躍は多岐にわたり、NHK教育テレビの教養番組「若い広場」では司会者としても出演し、幅広い分野でその才能を発揮しました。

作家活動と作風

作家としての加野厚志の主な活動分野は、時代小説と歴史小説です。彼の作品は、単なる歴史の再現に留まらず、ミステリーや剣戟アクション、伝奇的な要素を巧みに融合させているのが特徴です。歴史上の著名な人物から、架空の剣客や探偵、陰陽師、検死官といったユニークな主人公まで、扱う題材は多岐にわたります。

特に、幕末の動乱期を描いた作品が多く、『竜馬慕情』をはじめ、沖田総司を主人公としたシリーズや、龍馬暗殺の謎に迫る作品などがあります。また、戦国武将や三国志の英雄豪傑にも強い関心を示しており、島津義弘、徳川慶喜、大石内蔵助、本多忠勝、蕭何、孫策、貂蝉、呂布、黥布といった多様な人物をテーマにした作品を発表しています。これらの作品では、英雄たちの知られざる側面や、激動の時代における人間の葛藤、裏切り、そして絆といったテーマを掘り下げています。

また、「玄庵検死帖」シリーズのように、江戸時代を舞台にした検死官の活躍を描くなど、時代劇に探偵小説の要素を取り入れた作品も手がけています。その筆致は力強く、登場人物の心理描写や戦闘シーンの迫力に定評があります。日本推理作家協会の会員であることからもわかるように、歴史の謎や事件の真相に迫るストーリーテリングも得意としています。

様々な職業を経験し、人間社会の表裏を見てきたであろう彼の視点は、歴史上の出来事や人物を独自の角度から捉え、深みのある人間ドラマとして描き出すことに繋がっています。

主な著書

『悪の迷宮』（加野厚 名義）講談社ノベルス 1990.8
『愛の血をなぶれ』（加野厚 名義）双葉ノベルス 1992.3
『地獄の回転木馬』（加野厚 名義）双葉ノベルス 1992.11
『竜馬慕情』集英社 1995.2 のち文庫
『島津義弘 関ケ原・敵中突破の豪勇』PHP文庫 1996.12
『徳川慶喜』東洋経済新報社 1997.10
『鮫』集英社 1997 （文庫化改題『龍馬暗殺者伝』）
『大石内蔵助 忠臣蔵本伝』KSS出版 1998.10
『大利根の決闘 新天保水滸伝第1夜』KSS出版 1999.4 （文庫化改題『人斬り鬼門 1』学研M文庫）
『反骨の海軍大将井上成美』PHP研究所 1999.12
『本多平八郎忠勝 家康軍団最強の武将』PHP文庫 1999.5
『沖田総司・暗殺剣』廣済堂文庫 2000.3
『女陰陽師』祥伝社文庫 2000.12
『趙雲子竜』幻冬舎文庫 2001.3
『沖田総司・魔道剣』廣済堂文庫 2001.7
『女陰陽師湖底の鬼』祥伝社文庫 2001.9
『沖田総司獣王剣』廣済堂文庫 2001.12
『桂の花 幕末純愛伝』廣済堂出版 2001.5
『沖田総司・非情剣』廣済堂文庫 2001.2
『幽冥の刺客鬼門 屍蝋変幻』学研M文庫 2002.7
『探偵沖田総司』毎日新聞社 2003 （文庫化改題『幕末暗殺剣』講談社文庫）
『京都魔性剣 姫巫女烏丸龍子』双葉文庫 2004.4
『蕭何 劉邦に天下をとらせた名参謀』PHP文庫 2004
『池田屋の血闘 姫巫女烏丸龍子』双葉文庫 2004
『将軍まかり通る』ベスト時代文庫 2005
『孫策 呉の基礎を築いた江東の若き英雄』PHP文庫 2005.10
『初代花柳壽輔薫る寿』阪急コミュニケーションズ 2005.12
『玄庵検死帖』中公文庫 2008.3
『玄庵検死帖倒幕連判状』中公文庫 2008.6
『玄庵検死帖皇女暗殺控』中公文庫 2008.11
『貂蝉 女剣三国志』徳間文庫 2009.4
『悲将石田三成』徳間文庫 2009
『呂布 「飛将」と謳われた三国志最強の武将』PHP文庫 2009
『真説龍馬暗殺 諸説11の謎を解く』学研Ｍ文庫 2009
『黥布 項羽と劉邦が最も恐れた顔面刺青の猛将』PHP文庫 2011
『幕府検死官玄庵 血闘』文芸社文庫 2011
* 『幕府検死官玄庵 2 (斬心)』文芸社文庫 2012

これらの作品群を通して、加野厚志は時代小説・歴史小説の分野で独自の地位を築いています。

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