労作教育

労作教育について

労作教育は、主に20世紀初頭のドイツに起源を持つ教育理念であり、当時の教育改革運動の中で発展しました。特に、労作教育は19世紀末までの伝統的な教え込み教育への反動として、ゲオルグ・ケルシェンシュタイナーなどの教育者によって提唱された「労作学校」の概念から生まれました。この思想の根底には、実践的な学びを重視する意識があり、単に書物に依存するのではなく、実生活や経験を通じての教育を模索していました。

ケルシェンシュタイナーの影響

教育者ケルシェンシュタイナーは、その著作『労作学校の概念』において労作教育の思想を詳述しています。この著作は、日本の教育者小林澄兄によって翻訳され、多くの日本人教育者に影響を与えました。彼は、労作学校がマルクス主義の「労働」という概念から派生していることに気づきました。このため、労作教育は政治的含意を持ち得ると考え、禅僧百丈和尚の言葉「一日不作、一日不食」に触発されて、「働くこと」を禅的解釈で「作」として、労作（Arbeit）という表現を選びました。

この結果、労作教育という言葉には、ただの労働ではなく、精神的な創造や創作の側面が強調されることになりました。世界の中には「労働教育」といった表現を使う場合もありますが、広義では労作教育も労働教育の一部だと考えられています。

日本への波及

戦後には、小林と共に国際新教育協会を設立した小原國芳が、この理念に共感し、全人教育の一環として労作教育を取り入れました。彼が設立した玉川学園には、「一日不作、一日不食」の石碑が正門に設置されており、その教育理念が体現されています。小原は労作教育を、教科書に依存することなく、畑仕事や動物飼育、楽器作りなど自発的な活動を通じて学ぶ方法として捉えました。ここでの「作」という言葉は、作業や労働ではなく、創造や生産といった意味合いを持っています。

玉川学園の教育課程には、小学部から大学まで、労作の時間が設定されており、学生たちは実際に手を動かしながら学びます。さらに、東海大学等、他の教育機関でもこの労作教育の理念が取り入れられており、より広範な教育方針として浸透しています。

労作教育を支える文献

労作教育に関する知見は、多くの文献に記されています。たとえば、小原國芳の『全人教育論』や、小林澄兄の『労作教育思想史』などが挙げられます。これらの著作は、労作教育の哲学や実践を深く理解するための重要な資料となっています。

関連人物

この教育理念を極めて唱えた人物として、小西重直がいます。彼は労作教育の理論を広め、日本におけるペスタロッチのような存在とみなされています。

労作教育は、単なる学習の手段に留まらず、自己表現や社会性の育成、創造性の発揮を促進するための重要な教育の枠組みとなっています。

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