労使協調

労使協調について

労使協調（ろうしきょうちょう）とは、労働組合と使用者が協力し合い、企業の利益を向上させ、その結果として労働者の取り分を増やそうとする立場を指します。この概念は、労資協調、すなわち労働組合と資本家との協力とも呼ばれ、労使間の対立を和らげることを目的としています。

労使協調の源流

労使協調という考え方の精神的な源流にはいくつかの学派がありますが、特に19世紀末のドイツ社会民主党の論客エドゥアルト・ベルンシュタインが発表した修正主義理論が大きな影響を与えました。ベルンシュタインは、従来のマルクスの予言では資本主義の発展によって貧富の差が広がり、労働者と資本家の和解が不可能とされていたのに対し、労使間で譲歩し合うことで和解が可能になると説きました。

歴史的背景

労使協調の発展には、歴史的な背景があります。一つの重要な出来事が1930年の世界恐慌です。この時、資本が収益を独占することで自分自身を苦しめることに気づき、政府の市場介入が必要だと認識されるようになりました。これにより、ケインズ流の財政政策が広まり、労働者と資本家の両方に利益をもたらすことが明らかになりました。

第二次世界大戦後、アメリカなどの西側諸国の労働組合は、伝統的な世界労働組合連盟から離脱し、国際自由労働組合総連盟を設立しました。これにより、労使協調型の運動が強化され、ドイツ連邦共和国などでは労働組合の代表が監査役会のメンバーとして経営に関与するようになりました。

日本においては、労使協調型の労働組合としてかつて存在した鉄道労働組合（鉄労）があります。その後、国鉄の民営化を経て、現在のJR連合（日本鉄道労働組合連合会）へと進化しています。また、UIゼンセン同盟という全国レベルの連合体も存在します。

近年の状況

しかしながら、最近の労使協調には問題も見受けられます。「労使協調」という名のもとで、労働組合と企業が癒着し、実質的には労働者を管理するための機関、つまり「御用組合」と化しているケースが多く見受けられます。労働組合の幹部が特別優遇される一方で、正社員は雇用や賃金を保障されつつも新たな採用が控えられ、非正規雇用社員が増加するなどの状況が報告されています。

さらに、共産主義系の新左翼からは、こうした動きに対して「ボス交渉」や「第二労務課」といった批判が寄せられています。バブル経済崩壊後の厳しい経済状況の中で、労働組合が率先して人員整理に協力する例もあり、このような行動がさらなる批判を生んでいるのです。

結論

労使協調は、労働者と資本家の利害を調整し、共存共栄を目指す重要な思想です。しかしその一方で、現代の労働運動には様々な課題が存在します。今後、労働組合が真に労働者の権利を守り、経営側と健全な関係を築くことが求められています。

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