労農芸術家連盟

労農芸術家連盟（労芸）の歴史

労農芸術家連盟（ろうのうげいじゅつかれんめい）、通称労芸は、1920年代から30年代にかけて存在した日本のプロレタリア文学団体です。この団体は、社会運動や労働者階級の文化を伝えることを目的に結成され、さまざまな文学者や芸術家が集まっていました。特に、日本共産党の影響を受けて、芸術を社会運動と融合させようとしました。

1926年には日本プロレタリア芸術連盟（プロ芸）が創設され、これを契機にプロレタリア文学が活性化します。しかし、間もなく内部での意見対立が浮上します。この争いの発端は、鹿地亘が『無産者新聞』に載せた「所謂社会主義文芸を克服せよ」という論文にありました。この論文は、芸術と社会変革の関係についての論争を引き起こし、特に福本和夫など、日本共産党内の論客が強い影響を及ぼしました。

鹿地や中野重治は、芸術は運動に従属すべきだと主張し、これに対して蔵原惟人や葉山嘉樹などは批判的でした。両派の対立は次第に激化し、1927年6月にはプロ芸の主流派により蔵原や葉山が除名されました。除名された彼らは同年7月に労農芸術家連盟を立ち上げ、機関誌として『文芸戦線』を刊行しました。

この分裂は全国的な影響を及ぼし、小樽に住む小林多喜二も労芸に加わり、地元のプロ芸メンバーとの論争を繰り広げました。しかし、11月には『文芸戦線』の編集を行っていた山田清三郎が山川均のエッセイを掲載しようと試みたことが問題視されました。これにより、掲載を支持する者と反対する者との間で新たな対立が生まれました。反対派には蔵原や山田、藤森成吉、村山知義などがおり、最終的に蔵原らは組織を離脱し、前衛芸術家同盟（前芸）を結成します。

労芸はその後、プロレタリア文学の運動に対し消極的な姿勢を取りました。1928年に発足した日本左翼文芸家総連合や全日本無産者芸術連盟への参加を批判し、自らを社会民主主義的な団体と位置づけるようになります。しかし、この時期にも新進の作家たちが登場したものの、内部の問題が相次ぎました。特に岩藤雪夫の代作事件や、同人間での傷害事件が発生し、団体の風紀が損なわれる原因となりました。

これらの不満から、黒島伝治らは離脱し、最終的にはプロレタリア文学運動全体の衰退を招くことになります。1932年には労農芸術家連盟も解散に追い込まれ、活動を続けていた雑誌『文戦』はその後も改題を繰り返しながら万策尽き、1934年に廃刊となりました。これによって対立側の日本プロレタリア作家同盟（ナルプ）も同様に活動を停止し、結果的にプロレタリア文学運動は組織としての体をなさなくなってしまいました。

このように、労農芸術家連盟の歴史は、内部の対立や分裂を経て衰退し、最終的には解散を迎えるという波乱に富んだものでした。

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