勇気あるもの (吉永小百合 with トニーズの曲)

勇気あるもの（ゆうきあるもの）

「勇気あるもの」は、日本の著名な女優であり歌手でもある吉永小百合が、当時の新進フォークグループであったトニーズと共に制作し、シングル盤として世に送り出された楽曲です。このシングルは、1966年10月30日にリリースされました。

楽曲構成と背景

このシングルに収録されているタイトル曲「勇気あるもの」は、若さ溢れる青春の日々における友情のきずなを主題としたメッセージ性の強い楽曲です。この作品は、吉永小百合が歌手として発表した通算36枚目のシングル盤にあたります。楽曲の特色として挙げられるのは、バックコーラスに当時注目を集め始めていたフォークグループ、トニーズが参加している点です。彼らのハーモニーが、吉永小百合の歌声に新たな彩りを加えています。

本楽曲の作詩は佐伯孝夫氏、作曲および編曲は吉田正氏が担当しました。吉田正氏は、吉永小百合のヒット曲を数多く手掛けたことで知られる、日本の歌謡界において重要な役割を果たした作曲家です。

シングル盤のカップリング曲、すなわちB面には、「海に泣いてる」という楽曲が収録されています。この曲もA面と同様に佐伯孝夫氏が作詩し、吉田正氏が作曲・編曲を手掛けていますが、「勇気あるもの」とは異なり、歌唱はトニーズ単独で行われています。

メディアでの展開と反響

「勇気あるもの」は、リリースされるとそのテーマ性や歌唱が多くの人々に受け入れられ、様々なメディアで取り上げられることとなりました。

NHK紅白歌合戦での披露

この楽曲がリリースされた同じ年の1966年の大晦日には、国民的な音楽番組である『第17回NHK紅白歌合戦』において、吉永小百合さんが紅組の代表として出場し、「勇気あるもの」を歌唱しました。これは吉永小百合さんにとって5度目の紅白出場であり、この時もシングル盤と同様にトニーズがバックコーラスとして参加し、ステージを共にしました。紅白という大舞台での披露は、楽曲の認知度をさらに高める機会となりました。

映画『青春の海』主題歌

さらに翌年の1967年には、日活によって制作・公開された正月映画『青春の海』の主題歌として採用されました。この映画は吉永小百合さんが主演を務め、西村昭五郎氏が監督を務めた作品です。映画が描く青春群像劇と、「勇気あるもの」が持つ青春や友情を讃えるテーマ性は見事に合致し、楽曲が映画の世界観を一層深める役割を果たしました。映画のヒットとともに楽曲も再び注目を集め、吉永小百合の代表曲の一つとしての地位を確固たるものにしました。

後世への影響

「勇気あるもの」は、発表から長い年月を経た後も、その歌詞やメロディが持つ普遍的な力によって記憶されています。

特に印象的な出来事として、2011年に発生した東北地方太平洋沖地震（東日本大震災）からの復興を支援するために、吉永小百合さん自身が企画・制作したベスト盤CDのタイトルに、この楽曲の歌詞の一部が用いられたことが挙げられます。このベスト盤は『吉永小百合よみがえる歌声 この道は長いけど歩きながらゆこう』と名付けられており、困難な状況にあっても希望を持って前に進もうというメッセージが、この「勇気あるもの」の歌詞から引用されたフレーズに込められています。これは、この楽曲が単なる一時代の流行歌としてだけでなく、人々に勇気や希望を与える歌として、時代を超えて生き続けている証と言えるでしょう。

結び

「勇気あるもの」は、吉永小百合とトニーズという異なる才能が出会い生まれた、青春の輝きと友情の大切さを歌い上げた楽曲です。発売当時の歌謡界における重要な出来事である紅白歌合戦での歌唱や、主演映画の主題歌としての起用を通じて、広く人々の心に届けられました。また、時を経てなお、その歌詞に込められた前向きなメッセージは、様々な形で人々に寄り添い、勇気を与え続けています。日本の歌謡史において、そして吉永小百合の音楽活動における重要な一章として、「勇気あるもの」は今も輝きを放っています。

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