動脈列島

動脈列島

『動脈列島』（どうみゃくれっとう）は、1974年に清水一行によって書かれた小説を基にし、1975年に東京映画が製作した社会派サスペンス映画です。この作品は、当時の日本社会が抱えていた公害問題を題材にしており、名古屋市を舞台に、新幹線の騒音によって引き起こされる tragic な出来事を描いています。

あらすじ

物語は名古屋市熱田区で展開します。東海道新幹線が住宅地を時速200キロ近いスピードで通過する中、その騒音により近隣に住む一人の老婦人が精神的苦痛に悩み、最終的には命を落としてしまいます。主人公の青年医師、秋山宏（近藤正臣）は、この事件に強い怒りを感じ、国鉄への復讐を決意します。彼は恋人の看護婦、君原知子（関根恵子）に協力を依頼し、ニトログリセリンを盗むように指示します。

秋山はヨーロッパ旅行へ行くと偽り姿を消し、次の日には新幹線の車両トイレに脅迫状とニトログリセリンが発見されます。脅迫状には、国鉄に対する騒音対策の実施を要求し、応じなければ10日以内に新幹線を転覆させると書かれていました。すると、秋山の計画通り、豊橋駅での脱線事件が発生します。この脱線事件は、後続の新幹線が追突する危険な状況を引き起こしました。

その後、警察庁は捜査本部を設け、秋山が脅迫状の筆者であると考え、極秘裏に捜査を進めます。しかし、秋山は東京にも潜伏し、さらなる脅迫を続けます。彼は秋葉原で電波発信機を製作し、新幹線を更に停止させることを告げます。

捜査員たちが次のストップ予告を防ごうとする中、秋山は新幹線と並行する東名高速道路を走り、電波を発信して新幹線を再び止めることに成功します。これを受けて、捜査当局は公開捜査に切り替え、秋山を指名手配します。

その後も逃避を続けていた秋山は、知人の元看護婦・芙美子（梶芽衣子）に匿われています。彼は国鉄総裁に直接要求を伝え、その内容をマスコミに流出させます。犯行の日が迫る中、警察は新幹線の運行を見守ります。秋山はブルドーザーを使い新幹線の運行を妨害しようとしましたが、意外にも若い刑事が彼を阻止し、秋山は逮捕されることになります。

映画の意義

『動脈列島』が製作された1970年代は、国民の公害に対する意識が高まり、名古屋市では騒音公害の訴訟が行われていました。また、国鉄に対する反発が高まっていた時代背景もあり、映画はその社会的動向を反映しています。本作は、当時の国民の怒りと不満を代弁する作品として評価されています。

製作時、配給元の東宝はこの映画に対して懸念を示していましたが、最終的には内容が調整され制作にこぎつけました。撮影中、国鉄や警察は模倣犯を恐れ協力を拒否しましたが、監督の増村保造は作品を重厚に仕上げ、演技陣も多彩な顔ぶれを揃えています。原作小説は第28回日本推理作家協会賞を受賞し、映画も日本の社会派映画としての地位を確立しています。

このように『動脈列島』は、単なるエンターテイメントではなく、社会問題を深く掘り下げた作品として、多くの人々に考えるきっかけを与える作品となりました。

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