勘八峡

勘八峡

愛知県豊田市に位置する勘八峡（かんぱちきょう）は、一級河川である矢作川の中流域に広がる峡谷です。

概要

この峡谷は、豊田市内の平戸橋付近から越戸ダムまでの約2キロメートルにわたる区間を指します。長年の歳月をかけて、この地域の基盤をなす花崗岩の岩盤が、矢作川の力強い流れによって浸食されることで、現在の独特な地形が形成されました。

歴史

越戸ダムが建設される以前の勘八峡は、現在よりもその範囲が広く、一帯には奇妙な形状の岩や巨大な石が連続する、国内有数の景勝地として非常に有名でした。古くは江戸時代から、観光客を乗せた筏が行き交っていたと伝えられており、当時の人々にとって主要な行楽地の一つであったことがうかがえます。

大正時代から昭和時代の初期にかけては、その人気はさらに高まり、夏の風物詩である鵜飼いが催されたり、優雅な遊覧船が運航されたり、あるいはスリル満点の急流下りが体験できたりと、様々な観光要素で多くの人々を惹きつけました。その美しい景観は広く認められ、1927年（昭和2年）には、当時の有力紙であった新愛知新聞が選定した「愛知新十名所」において、堂々たる第六位に選出されています。

現在の景観と利用

しかしながら、1929年（昭和4年）に越戸発電所が完成し、それに伴い越戸ダムが建設されてからは、勘八峡の風景は大きく変化しました。かつて急流が作り出していた奇岩の景観は、ダムによって水量が調整されるようになったことでその姿を変えました。

現在、越戸ダムによって形成されたダム湖の周辺には、多くの桜が植樹されており、春には満開の花々を楽しむことができる、新たな花見の名所として親しまれています。また、ダム湖ではカヌーやボートなどの水上アクティビティが盛んに行われ、ウォータースポーツのメッカとして賑わいを見せています。一方で、ダムによる水量の制限により、峡谷本来の川の流れは以前に比べて大幅に減少し、一部では水が涸れ気味の状態となっています。そのため、かつては多くの人が訪れた峡谷の谷底へ足を運ぶ人は、残念ながら減少傾向にあります。

なお、ダム湖沿いを走る国道153号線（飯田街道）に設けられた駐車スペースの下流側からは、天候に恵まれ空気が澄んでいる日には、遠方にそびえる恵那山の美しい姿を望むことができます。

交通アクセス

公共交通機関

名鉄三河線 平戸橋駅下車、駅から徒歩でおよそ10分です。

自動車

東海環状自動車道 豊田勘八インターチェンジより、車でおよそ10分です。
猿投グリーンロード 枝下インターチェンジより、車でおよそ15分です。

関連情報

全日空バイカウント機墜落事故 - 1966年に発生した航空事故で、勘八峡からほど近い国有林に墜落しました。

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