勝願寺 (鴻巣市本町)

勝願寺の歴史と文化

勝願寺は、埼玉県鴻巣市に位置する浄土宗の寺院で、天照山良忠院と号します。この寺院は、浄土宗関東十八檀林の一つであり、その歴史は鎌倉時代にまで遡ります。創建当初は、浄土宗の僧侶である良忠によって開かれましたが、その後、宗派が真言宗へと変わる時期もありました。しかし、江戸時代に入り、高僧である惣誉清厳によって浄土宗寺院として再興され、現在に至ります。

創建と宗派の変遷

勝願寺の創建は、浄土宗第三祖である良忠が、鎌倉幕府の執権である北条経時より土地の寄進を受けたことに始まります。当初は良忠の師である勝願院良遍にちなんで勝願寺と名付けられました。良忠の没後、寺は一時期、浄土宗寺院としての歴史が途絶え、室町時代から戦国時代にかけての戦乱により荒廃し、真言宗に改められました。しかし、天正年間に高僧である惣誉清厳によって浄土宗寺院として再興されました。創建時期については諸説あり、寄進者についても異なる説が存在します。

江戸期の繁栄と徳川家との関係

天正年間に惣誉清厳が寺を再興し、その後、圓誉不残が住職となると、寺は大きく発展しました。圓誉不残は学徳が高く、徳川家康が寺を訪れた際には法問論議を行い、家康から深く帰依されました。家康は、寺に三つ葉葵の使用を許可し、寺領の寄進や諸役免除を行い、勝願寺は徳川家から手厚い庇護を受けるようになりました。徳川家康だけでなく、二代将軍の徳川秀忠や三代将軍の徳川家光もこの寺を訪れるなど、徳川家との関係は非常に密接でした。また、勝願寺は江戸時代には学問所、僧侶の養成機関として機能し、関東における浄土宗の中心的な役割を担っていました。

結城御殿の移築

勝願寺の伽藍は、徳川家康の次男である結城秀康が、関ヶ原の戦いの論功行賞により下総国結城から越前国北の庄へ移封された際、家康の命により結城城の御殿、隅櫓、御台所、太鼓櫓、築地三筋塀、下馬札などを移築したものです。御殿は「金の間」と「銀の間」に分かれ、将軍来訪の際には「金の間」が使用されました。これらの建物は、伊奈忠次が作事奉行として携わったとされています。

明治期以降と現在の勝願寺

明治時代に入ると、廃仏毀釈や風災、火災により寺勢は一時的に低下しましたが、その後、本堂や仁王門などが再建され復興しました。現在では、毎年11月に行われる「お十夜」は、鎌倉の光明寺や八王子の大善寺とともに「関東三大十夜」の一つとして知られ、多くの参拝者が訪れます。また、境内の一部は公園として整備され、市民の憩いの場となっています。

境内と文化財

勝願寺の境内には、本堂、仁王門、龍寿殿、惣門などがあります。本堂には、平安時代の作と伝えられる阿弥陀如来像や、開山者の良忠上人の木像が安置されています。仁王門には、三峯神社から贈られた仁王像が立ち並んでいます。また、境内には数々の文化財が存在し、県指定文化財や市指定文化財があります。特に有名なのは、絹本着色阿弥陀廿五菩薩来迎図、伊奈忠次墓、後陽成天皇御宸筆などがあります。

墓所

勝願寺には、歴史的な人物の墓所も存在します。小松姫（本多忠勝の娘で、真田信之の妻）は、生前、当寺の住職である円誉不残に帰依していたため、一周忌の際に分骨されました。その他にも、真田信重夫妻、仙石秀久、伊奈氏、牧野氏など、多くの歴史的な人物がこの寺に埋葬されています。

アクセス

勝願寺は、JR高崎線鴻巣駅から徒歩約10分の場所に位置しており、関越自動車道東松山インターチェンジからも車でアクセス可能です。この歴史ある寺院は、多くの人々に親しまれ、その歴史と文化を今に伝えています。

年中行事

勝願寺では、毎年11月にお十夜が開催されます。これは、鎌倉の光明寺や八王子の大善寺と並び、関東三大十夜の一つとされています。期間中は、人形供養や僧侶による行進などが行われるほか、多くの夜店が並び、賑わいを見せます。

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