勝願寺 (鴻巣市登戸)

勝願寺（しょうがんじ）

勝願寺は、埼玉県鴻巣市登戸にある新義真言宗の寺院で、本尊として不動明王を祀っています。この寺は、同市本町に存在する浄土宗の勝願寺と区別するために「登戸勝願寺」としても知られています。

歴史

勝願寺の歴史は、鎌倉時代に遡ります。当寺は、鎌倉幕府第4代執権である北条経時の支援を受けて浄土宗の第3祖、良忠によって設立されました。創建時期については、文永年間（1264年 - 1274年）であるとする説や、文永元年（1264年）とする説があります。

その後、寺は衰退し、宗派も真言宗に変更されましたが、戦国時代末期に総誉清厳（または円誉不残）によって再興されました。その際、寺は鴻巣宿へ移転し、登戸の地には記主の住まいのみが残りました。この居宅は村民の福島氏が管理することになりました。

江戸時代には、著名な文献において、他宗の僧侶がこの寺に住んでいたと記録されています。「道祖土氏伝記」では、道祖土満兼が無住であった松岡山勝願寺に新義真言宗の僧である円慶法印を迎え入れ、寺名を「新願寺」と改名したとされています。

その後、勝願寺の存在は江戸幕府第2代将軍徳川秀忠に知られ、秀忠は寺領として10石を寄進しました。このため、円慶が新義真言宗の僧であったことが影響し、宗派が正式に改められました。さらに、貞享2年（1685年）には徳川綱吉から朱印状が発給され、勝願寺の地位が確立されました。当時の朱印状には、家光公からの伝達が記録されています。

また、元禄16年（1703年）には、勝願寺の龍珠院が末寺昇格したことも記録されています。この際、金銭が寄進され、法流が受け継がれるなど、寺の組織が整備されました。興味深いことに、浄土宗から新義真言宗に改宗しても、本堂に阿弥陀如来、道場に不動明王という二つの本尊が残っていることから、過去の宗派との関係が窺えます。

境内では、1745年に建立された本堂や山門、さらには南北朝時代に作られた六地蔵板碑などがあります。

伝承

勝願寺には、伝説も数多く残されています。特に、仁王像に関する話が有名です。この仁王像は鎌倉時代の仏師・運慶の作と伝えられ、人々に恐れられる存在でした。仁王像は「子喰仁王」と称されるほど怖れられ、ある日行方不明になった子供の着物の端が仁王の口から垂れ下がっているのを目撃した住職は、仁王の首を切り取って櫃に収め、新たに仏師に首を作らせたという話が伝わっています。

文化財

勝願寺には坂安二年に造立された「六地蔵板碑」が市指定文化財として認定されています。この碑には六体の地蔵菩薩が刻まれており、地蔵尊をこのような形で表現する例は非常に少なく、貴重な文化財とされています。

勝願寺はその歴史と伝承、文化財により、地域の重要な宗教的・文化的な拠点としての役割を果たしています。

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