勢道政治

勢道政治について

勢道政治（せいどうせいじ）は、李氏朝鮮の後期において見られた特異な政治形態を示します。この言葉は、朝鮮語で「세도 정치」と表記され、王の信任を受けた個人や集団が政権を独占的に掌握する状態を指します。元々は、「有能な人物が王を助けて世の中を導く」という思想に基づくものでしたが、時代が進むにつれてその性質が大きく変わりました。

歴史的背景

もともとこの政治形態は士林派の考え方に基づいていました。しかし、正祖の死後に幼君である純祖が王位に就くと、外戚や寵臣の権力が拡大することとなりました。特に目立ったのが洪国栄という人物で、彼は正祖時代に権勢を誇り、王妃や王子に近しい地位にあった外戚として政権を掌握しました。洪国栄は廃太子の子供である正祖を擁立したことで一躍出世し、彼自身も権力を持つ存在となりましたが、最終的には暗殺未遂事件にかかわって失脚しました。

外戚の台頭

正祖没後、権力のバランスは大きく変化し、貞純王妃などの外戚が政権に深く関与することとなりました。彼女はその在位時に、保守派の中心となり、多くの取り巻きを持つ大物政治家としての面を見せました。彼女の垂簾聴政によって、安東金氏の地位も確立され、政治の舞台において重要な役割を果たすことになります。

対抗勢力の出現

一方で、安東金氏に対抗する動きも見られました。その代表が豊壌趙氏で、純元王后を通じて外戚の地位を獲得しようとしましたが、憲宗の男子が早世したことにより状況は変わります。この時期、外戚は王を立てることで権力を維持・拡大し、「手段と目的の逆転」が見られました。

最後の展開と政権の変化

哲宗の治世では、王族の嫡流の断絶が見られ、傍系から王を立てる道が模索されることとなります。李昰応が興宣大院君として摂政となった後、権力争いが続く中で安東金氏の影響力は一時的に排除されます。この時期、興宣大院君は静かに権力を増すも、彼自身もまた権力に対する不信感が募り、最終的に閔妃率いる驪興閔氏との対立が激化することになります。

1873年には閔妃が興宣大院君を失脚させるものの、その後の政権運営においては政権の私物化や国庫の浪費が問題となり、権力がどのようにして維持されるかという問題が続いていました。1895年、閔妃が暗殺されると、彼女を中心とした一派は明らかに衰退し、結果として勢道政治の時代は幕を閉じることとなります。

関連項目

• - 外戚
• - 三政の紊乱

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