勤式指導所

勤式指導所（ごんしきしどうしょ）

勤式指導所は、浄土真宗本願寺派がかつて京都にある西本願寺の境内に設置していた教育研究機関です。主に、尊前で行う勤行（ごんぎょう）や様々な儀式作法、すなわち「勤式」に関する専門的な知識と技能の習得、研究、そして指導者の育成を目的としていました。この施設は、2024年（令和6年）3月をもって廃止されました。

概要

勤式指導所は、浄土真宗本願寺派における勤式の正しいあり方を指導し、広く普及させるための中心的な役割を担っていました。その活動は多岐にわたり、具体的には以下のような業務を行っていました。

• - 勤式の指導および普及活動
• - 勤式に関する講習会の企画・実施
• - 将来の指導者や実践者を育成するための研究生および練習生の指導
• - 勤式に関する声明集などの文献の編纂や発行
• - 勤式指導に携わる人員に関する業務

設置課程

閉鎖される2024年時点で、勤式指導所には僧侶や教師が勤式を専門的に学ぶための二つの課程が設けられていました。これらの課程を通じて、実践的な勤式の技能と理論が教授されていました。

練習生課程

定員: 50名程度
講義内容: 声明（しょうみょう）、正信偈（しょうしんげ）、礼讃（らいさん）、読物、作法、法式故実（ほうしきこじつ）、声明講讃、実践運動、そして法要行事の実践的な実習など、多岐にわたる科目が含まれていました。
応募資格: 本願寺派の僧侶であり、満20歳以上であること、そして過去に本課程を修了していない者が対象でした。
修了特典: 課程を修了し、修了試験に合格した者は、本人の申請により法務員資格試験が免除されるという特典がありました。

研究生課程

定員: 50名程度
講義内容: 練習生課程の内容に加え、雅楽（ががく）や雅楽の実習など、より高度で専門的な内容が含まれていました。
応募資格: 本願寺派の教師資格を持ち、法務員資格試験に合格していること、そして過去に本課程を修了していない者が対象でした。
修了特典: 課程を修了し、修了試験に合格した者は、本人の申請により特別法務員資格試験が免除されるという特典がありました。

沿革

勤式指導所の歴史は、明治時代にまで遡ります。

1880年（明治13年）: 西本願寺第21世法主、大谷光尊師が大津の三井寺山内に梵唄（ぼんばい：声明のこと）の練習場を開設したのが始まりとされています。
1881年（明治14年）: 練習場を本願寺境内に移転する計画が立てられ、仮施設を経て本格的な移転が進められました。
1887年（明治20年）: 西本願寺境内の結衆詰所が勤式練習場として使用されるようになります。
1922年（大正11年）: 西本願寺内に正式な勤式練習所が開設されました。
1949年（昭和24年）: 「竜谷勤行要集」が発行されるとともに、勤式指導所規程が制定され、勤式練習所から「勤式指導所」へと名称が改められました。
1952年（昭和27年）: 「新制勤行聖典」が発行され、これに合わせて研究生課程が新たに設置されました。
その後も、1954年（昭和29年）の「声明集解説」発行をはじめ、1972年（昭和47年）「浄土真宗本願寺派檀信徒勤行経典」、1978年（昭和53年）「龍谷勤行要集（改訂第2版）」、1986年（昭和61年）「浄土真宗本願寺派葬儀規範勤式集」、1996年（平成8年）「表白集（蓮如上人500回遠忌法要記念）」監修、1999年（平成9年）「浄土真宗本願寺派　法式規範」、2001年（平成11年）「龍谷勤行要集（改訂第3版）」、2003年（平成15年）「勤式集」、2005年（平成17年）「浄土真宗本願寺派法式規範 別冊」、2007年（平成19年）「浄土真宗本願寺派 法式規範（増補版）」および「葬儀勤行集」、2008年（平成20年）「西本願寺在家勤行 お経CD」読誦・発行、2009年（平成21年）「浄土真宗本願寺派葬儀規範」の発行など、勤式に関する重要な書籍や資料の編纂・発行に深く関わってきました。
2024年（令和6年）: 門徒会館の閉鎖に伴い、勤式指導所はその活動を終え、廃止されました。これに代わり、同年からは「中央仏教学院研究科勤式課程」が新設され、従来の課程が担っていた法務員や特別法務員の養成を引き継いでいます。

所在地（廃止当時）

京都市下京区堀川通花屋町本願寺北境内地 門徒会館内に置かれていました。

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