北上バス転落事故

北上バス転落事故

1955年（昭和30年）5月14日、岩手県北上市で発生した北上バス転落事故は、修学旅行中の小学生を乗せたバスが橋から転落し、12名の尊い命が失われた悲惨な交通事故です。

事故の概要

事故が発生したのは、午後7時30分頃のことでした。花巻電鉄（現在の岩手県交通）の観光バスは、石鳥谷町立八日市小学校の6年生34名を含む総勢51名を乗せ、北上市飯豊町を走行中、大堰川に架かる飯豊橋を渡っていました。その際、前方から来た自転車を避けようとしたバスが誤って橋の欄干に衝突。老朽化していた欄干を突き破り、バスは大堰川の河川敷へと転落、大破しました。

この事故により、乗車していた51名のうち、12名が死亡、6名が重傷、22名が軽傷を負うという大惨事となりました。死亡者には、小学生のほか、引率の教員や付き添いの家族も含まれていました。

事故原因と背景

直接的な原因は、バス運転手のハンドル操作ミスとされています。しかし、事故後には「無理な修学旅行の旅程が遠因ではないか」という指摘が相次ぎました。当時の修学旅行は、現在とは比較にならないほど過密なスケジュールが組まれていました。

八日市小学校の修学旅行は、5月13日の早朝に学校を出発し、仙台市内の観光を経て松島を訪れ、塩竈市内の旅館に宿泊。翌日（事故当日）は早朝に塩竈市を出発し、三陸海岸や製塩工場を見学後、学校へ帰るというものでした。事故発生時刻は夜の7時半頃でしたが、学校まではまだ18.5kmも離れていました。当時の劣悪な道路事情を考慮すると、非常にタイトなスケジュールであったことがわかります。

各方面からは、学校へ早く帰ろうとするあまり、運転手が無理な運転をしたのではないかという意見が出されました。しかし、当時はこのような過密なスケジュールで修学旅行を行う学校が少なくありませんでした。

事故後の影響

事故現場となった飯豊橋のたもとには、犠牲者を弔う慰霊碑が建立されました。また、この事故をきっかけに、全国交通安全運動で配布される「黄色い羽根」が誕生しました。当時、慰霊祭に参列した岩手県交通安全協会会長が、「交通安全を呼びかけるシンボルを作ろう」と思い立ち、協会事務局が考案したものが全国に広まっていったのです。

関連する事故

1955年5月は、修学旅行客を輸送中の交通機関での事故が多発した時期でもありました。本件事故の3日前には宇高連絡船の紫雲丸事故が、3日後には東海道本線の東田子の浦事故、福岡県柳川市では修学旅行バスの炎上事故が発生しています。これらの事故は、当時の交通安全に対する意識の低さや、無理な運行スケジュールが原因であったとも考えられています。

まとめ

北上バス転落事故は、バス運転手のミスだけでなく、当時の修学旅行の過密なスケジュールや安全意識の低さが複合的に影響して発生した悲劇でした。この事故を教訓に、二度とこのような悲劇を繰り返さないよう、交通安全の重要性を再認識する必要があります。

関連項目

北上川
飛騨川バス転落事故
青木湖バス転落事故
犀川スキーバス転落事故
* 軽井沢スキーバス転落事故

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