青木湖バス転落事故

青木湖バス転落事故とは

1975年（昭和50年）1月1日午前11時20分頃、長野県大町市の青木湖畔で、痛ましいバス転落事故が発生しました。この事故は、多くのスキー客を乗せた送迎バスが、凍結した路面で制御を失い、湖に転落したものです。

事故の概要

事故が発生したのは、青木湖畔にある市道の急カーブでした。ホテルに向かう送迎バスは、未舗装の凍結した坂道を登りきった直後、左カーブに差し掛かりました。このカーブは半径20メートルほどの鋭角で、6～7度の上り勾配がありました。

バスは定員32名のところ、ほぼ2倍となる62名もの乗客を乗せていました。車内は非常に混雑しており、通路や前部ドアのステップ部分までスキー客で埋め尽くされていました。この過密状態が、事故の被害を拡大させる要因の一つとなりました。

事故当時、バスにはスタッドレスタイヤは装着されておらず、滑り止め対策としてタイヤチェーンが必要でしたが、それも装着されていませんでした。凍結した路面での運行は非常に危険な状態でした。

運転手は、左前部のミラーがステップに乗った乗客によって見えない状態でした。そのため、運転手は左側をこすらないように注意し、右に寄り過ぎた結果、右前輪が脱輪しました。バスはそのまま33メートル下の青木湖へ滑り落ちるように転落しました。

バスは転落後、一度は湖面に浮上しましたが、約5分後には完全に水没しました。運転手、運転助手、そして乗客36名のうち、38名は窓から脱出しましたが、24名が逃げ遅れて溺死するという悲劇となりました。また、15名が負傷しました。

当時の気象状況は、天候は曇りで、気温1度、湖水温度は6度でした。救助された乗客の多くはバスの後部に座っており、前部にいた乗客の多くが犠牲になりました。

事故後の影響

この事故の責任を問われ、運転手は実刑判決を受けました。また、事故現場となった道路は、事故後、大町市によって改修工事が行われ、幅員が8.9メートルに拡張されました。この事故は、バス運行における安全対策の重要性を社会に強く認識させる出来事となりました。

事故から得られた教訓

青木湖バス転落事故は、以下の教訓を私たちに示しました。

過積載の危険性: 定員を超える乗客を乗せることは、事故発生時の被害を拡大させる危険性があります。バスの定員は必ず守るべきです。
安全装備の重要性: 冬季の道路では、スタッドレスタイヤやタイヤチェーンなどの滑り止め対策が不可欠です。これらの装備を怠ると、重大な事故につながる可能性があります。
運転手の安全確認: 運転手は、安全確認を徹底しなければなりません。ミラーが見えない状態での運転は非常に危険であり、安全な運行を妨げる要因となります。
道路環境の整備: 事故現場となった道路は、改修工事によって安全性が向上しましたが、道路環境の整備もまた、事故防止には重要です。

関連する事故

青木湖バス転落事故と同様のバス転落事故は、過去にもいくつか発生しています。

飛騨川バス転落事故
犀川スキーバス転落事故
北上バス転落事故
屯門公路2階建てバス転落事故
軽井沢スキーバス転落事故

これらの事故も、安全対策の重要性を物語っています。

外部リンク

長野県警察50年の主な事件・事故（昭和50年〜59年）
長野県警察
* （映像）中日ニュース 1975年1月10日「スキーバス青木湖へ転落」
中日映画社

青木湖バス転落事故は、決して風化させてはならない悲劇です。私たちはこの事故から得られた教訓を胸に、二度とこのような悲劇を繰り返さないように努力しなければなりません。

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