北出塔次郎

北出塔次郎（きたで とうじろう）

北出塔次郎は、1898年3月8日に兵庫県に生まれた、日本を代表する陶芸家であり、特に九谷焼の領域で著名な存在です。もとの姓は坂本で、本名は北出藤治郎です。作陶の道に進む以前の彼は、さまざまな経験を積み、それらをもとに伝統的な九谷焼に新たな表現を与えるスタイルを確立しました。

経歴の概要

塔次郎は1916年に関西大学法科に入学するも、学問の道を捨てて大阪美術学校へ転向。そこで南画の大家、矢野喬村の指導を受けることで、彼の芸術的感性が磨かれました。1921年には九谷焼の名門である北出家に婿養子として入ったことにより、陶芸の道へと進みます。ここで板谷波山に師事し、本格的な作陶テクニックを習得していきました。

さらに、塔次郎は1936年からは富本憲吉のもとでも修行を重ね、九谷焼に深く取り組む姿勢を強固にしました。これにより、彼は九谷焼の世界における新しい風を吹き込む存在となります。

主な業績

1940年、塔次郎は「紀元二千六百年奉祝美術展」に彼の作品「色絵陶磁魚貝文平鉢」を出品し、翌年の1941年には第4回新文展において「悠久牛壁面パネル」を出品、特選に選ばれました。これらの作品は、彼の技術の粋を結集したものであり、彼の名声をさらに高めることとなりました。これらの活動を経て、石川県の勅使村（現在の加賀市）に移住します。

1946年には金沢美術工芸専門学校の講師に就任し、1949年には教授に昇進。学界においても影響力のある人物として活動を続け、日展への出品も行いました。後には日展の評議員としても活躍するなど、彼の貢献は広範囲にわたりました。

最期と遺産

塔次郎は1968年、日本芸術院賞を受賞した翌年の12月12日に、胃癌によって富山県の療養施設で逝去しました。享年70歳という早すぎる死であり、彼の作品や後進への影響を惜しむ声が多数寄せられました。晩年には、自らの作品のコレクションとともに収集した作品を金沢美術工芸大学に寄贈。これらの作品は「北出コレクション」として大学にて保管されています。

塔次郎の作品は、九谷焼の伝統を守りつつも新しいスタイルを確立したことにより、日本の陶芸界において大きな影響を及ぼしました。彼の生涯と作品は、未来の陶芸家たちにとっての一つの指標となり続けています。

もう一度検索