北富士演習場

北富士演習場の概要

北富士演習場（きたふじ えんしゅうじょう）は、富士山北麓に広がる陸上自衛隊の重要な訓練施設です。この演習場は山梨県の富士吉田市と山中湖村にまたがっており、北富士駐屯地業務隊がその管理を行っています。演習場の面積はおよそ4,597ヘクタールにおよび、国有地だけでなく県や公民の土地も含まれている点が特色です。

管理と利用

北富士演習場では、主に小銃や機関銃、さまざまな火砲等の射撃訓練が行われています。また、日米安保条約に基づき、日本の陸上自衛隊だけでなく、アメリカ軍もこの施設を共同利用しています。演習場内の使用は、地元住民との特別な協定に基づいており、彼らは入会権を持つことで林業や山菜採取を行っています。地元住民で構成される「吉田恩組」という団体は、演習場での野焼きなどの地域行事を年中行事として定期的に行っています。

歴史的背景

北富士演習場の歴史は1936年にさかのぼります。当初、大日本帝国陸軍によって開設され、その後、山梨県と用地売買契約が結ばれました。1945年には、戦争の終結に伴い連合国軍に接収され、その後アメリカ軍が1955年に射撃演習を開始しました。漸く1958年に日本に返還された後も、演習場の利用は続き、地域に深刻な影響を及ぼしてきました。

特に戦後の混乱期には、アメリカ軍の訓練活動により地元住民の生活が脅かされる事態が続いていました。忍野村の農民たちは入会地を守るため、アメリカ軍に対する抗議活動を展開し、特に数々のゲリラ的抵抗活動が行われました。これにより、彼らは入会権確保の光と希望を賭けて立ち上がったのです。戦後の住民の思いは、今日まで続く地域住民の運動に受け継がれています。

忍草母の会と地域運動

地元の忍野村においては、1960年に結成された「忍草母の会」が有名です。この団体は、入会権を守るための反対運動を展開し、その活動は徐々に「反戦・反基地」という広い政治的課題へと展開していきました。「忍草母の会」は、成田空港の建設に反対する運動と連携を強化し、相互に影響を与え合ってきました。特に60年代から70年代にかけて、彼女たちの活動は日本全土に広がり、社会的な反響を呼び起こしました。残念ながら、その活動は近年の高齢化により衰退していますが、その精神は今も多くの人々に受け継がれています。

近年の動向

2018年には、陸上自衛隊とイギリス陸軍との合同演習が行われ、地域住民への公開も行われました。演習場の現状は地域社会と密接に関わっており、過去の歴史を考慮しつつ新しい形の利用が模索されています。北富士演習場は、単なる訓練施設ではなく、地域住民の歴史や思いが凝縮された複雑な背景を持つ場所であることを忘れてはなりません。

結論

北富士演習場は、陸上自衛隊とアメリカ軍が共同で利用する重要な施設として、周囲の地域と深く結びついています。その悠久の歴史と地域住民の抵抗運動は、今日も引き継がれており、地域社会にとってのアイデンティティともなっています。このような特殊な役割を持つ演習場の存在は、今後の日本の安全保障や防衛政策にとっても重要な意味を持ち続けることでしょう。

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