北島義俊

北島 義俊（きたじま よしとし）氏は、1933年8月25日に生まれ、2024年2月13日に90歳でその生涯を閉じた、日本の著名な実業家です。特に、印刷業界の最大手である大日本印刷株式会社（DNP）において、第5代社長および前会長として長期間にわたり経営の重責を担いました。

彼は、大日本印刷の「中興の祖」と称される第4代社長、故・北島織衛氏の長男にあたります。プライベートでは、住友元夫氏の長女である喜代子氏を妻に迎え、二人の息子、現在の第6代社長である義斉氏と、専務執行役員を務める元治氏をもうけています。このように、一家三代にわたってDNPの経営の中枢を担ったことは、彼のキャリアを語る上で重要な側面と言えるでしょう。

北島氏のキャリアは、1958年3月に慶應義塾大学経済学部を卒業したことから始まります。同年4月には富士銀行に入行し、金融の世界で経験を積みました。その後、1963年5月に家業である大日本印刷に入社し、印刷業界へと活躍の場を移します。

1979年12月には、父・織衛氏の後を継ぎ、大日本印刷の第5代社長に就任しました。以来、実に38年以上の長きにわたりトップとして同社を率い、事業の多角化やグローバル展開など、DNPの成長戦略を推進しました。その経営手腕は広く評価されています。

社長在任中、彼は業界内外の活動にも積極的に関与しました。2010年には日本デジタルコンテンツ協会の会長を務め、デジタル分野の発展に貢献しました。また、2014年4月からは東京医科歯科大学の経営協議会学外委員として、教育分野にも知見を提供しました。

2018年6月28日をもって、北島氏は長年務めた社長職を退任し、会長に就任しました。後任の第6代社長には、長男の北島義斉氏が就任しました。この親子間での社長交代劇は、一部で「世襲」との批判的な論評も呼びました。

北島氏の経歴の中でも特に注目されたのは、その報酬額です。2010年3月期の有価証券報告書によって、彼の同時期の報酬が7億8700万円であったことが明らかになりました。これは、当時公表されていた日本人役員の報酬額としては最高額でした。この報酬の内訳は、大日本印刷からの基本報酬が7億1000万円と、大部分を占めていました。さらに、この高額報酬は、当時の大日本印刷の従業員平均年収（647万円）の約122倍にあたり、経営トップと一般従業員との間の大きな所得格差を示す事例として、社会的な関心を呼びました。

国際的な評価も受けており、栄典としては、2001年10月5日にデンマーク王国よりダンネブロ勲章ナイトを、2007年12月18日にはフランス共和国よりレジオンドヌール勲章コマンドゥールをそれぞれ受章しています。

晩年は老衰のため、2024年2月13日に90歳で穏やかに永眠されました。

大日本印刷以外にも、過去には北海道コカ・コーラボトリングの会長やテレビ朝日の取締役を務めるなど、幅広い分野で活動しました。また、既述の通り、父の北島織衛氏、長男の北島義斉氏、次男の北島元治氏といった家族も、大日本印刷の経営に関わっています。

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