北嶋興

北嶋興：伝説のアナウンサーから実況の革命児へ

北嶋興氏は、1956年東京都生まれのフリーアナウンサーです。静岡第一テレビ（SDT）での活躍を経て、現在はオフィス・ケイ・ステーション代表として活躍しています。数々のエピソードに彩られた彼のキャリアは、日本の放送史に独自の足跡を残しています。

学生時代から芸能界との接点

文京区立昭和小学校、文京区立第九中学校時代には、後の落語家春風亭小朝氏や作家横山秀夫氏と同学年または先輩として交流がありました。高校時代には日本大学第二高校放送部で活動し、文化祭でのDJが才能を開花させるきっかけとなります。2学年先輩にあたるアイドルグループキャンディーズの伊藤蘭氏から芸能界入りを勧められたことが、彼の転機となりました。その後、映画評論家小森和子氏を通じてニッポン放送でラジオ番組の裏方修行を始め、秋元康氏とも同時期にニッポン放送で経験を積んだことが明らかになっています。高校3年時には劇画『愛と誠』で声優デビューも果たし、同作品には高校時代の友人である女優岡江久美子氏も出演していました。

静岡第一テレビ時代：人気アナウンサーとして

大学卒業後の1980年、北嶋氏はSDTに入社。朝の情報番組『ズームイン!!朝!』で3年間活躍し、司会の徳光和夫氏から「北嶋少年」と呼ばれていました。その後、ローカルニュースワイド『Todayしずおか』や、情報バラエティ番組『JanJanサタデー』などでも活躍し、SDTでは人気アナウンサーとして、視聴者から絶大な支持を得ました。特に『JanJanサタデー』では「ミスターK」として親しまれ、数々の伝説を残しています。俳優の柴田恭兵氏や竹中直人氏からコンビ結成を誘われたエピソードは有名です。

彼の高い人気は、ファンクラブ結成を希望する高校生のエピソードからも伺えます。結婚発表を機に、ファンクラブ結成を希望する女子生徒たちが号泣し、社内全体が騒然とするほどでした。当時の報道制作局長からは、結婚の延期を要請されたという逸話も残っています。

フリー転向後：公営競技実況の革命児

1985年、28歳でSDTを退社しフリーアナウンサーに転身。テレビ東京『メガTONスポーツTODAY』キャスターを経て、ボートレース、競輪、オートレースの実況中継で頭角を現します。スポーツ新聞で「西の杉本清、東の北嶋興」と称賛され、選手への個性的なニックネーム付けや、臨場感あふれる実況で知られるようになりました。

北嶋氏の実況は、単なる結果報告にとどまらず、選手の個性やレース展開を巧みに表現したものでした。オッズの発表や、「水上の格闘技」というフレーズを生み出すなど、公営競技実況に革命を起こしたと評されています。鵜飼菜穂子選手への「インの鬼姫」や、岩口昭三選手への「花のお江戸の水面で舞うか勝利の桜しぶき」といった比喩表現は、彼の才能を象徴するものです。競輪実況における滝澤正光選手への「来たぞー来たぞー、凄い、まさに人間発電所」も、名実況として語り継がれています。オートレースでは「リビングアリーナの皆さん、ご起立ください」というフレーズが流行語となるなど、幅広い層に支持されました。さらに、藤岡弘、氏とオートレースのCMで共演するなど、その活躍は多岐に渡ります。

北嶋興氏の功績

北嶋興氏のキャリアは、単なるアナウンサーとしての枠を超え、エンターテイメント性と高い実況技術を兼ね備えた、唯一無二の存在として評価できます。数々の伝説とエピソードは、後世のアナウンサーたちにも多大な影響を与え続けていることは間違いありません。彼の功績は、日本の放送界に新たな地平を開いたと言えるでしょう。

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