北川貞彦

北川貞彦の生涯と業績

北川貞彦は、1856年（安政3年）に土佐藩士の次男として高知に生まれました。幼少期は「熊治」と呼ばれ、藩校・致道館や共立学舎英学校で学びました。その後、東京へ遊学し、1876年（明治9年）に代言人（弁護士）の免許を取得しました。

自由民権運動への参加

北川貞彦は、自由民権運動に深く関わり、1877年（明治10年）には「立志社」の下部組織として民権結社「発陽社」を設立し、社長を務めました。発陽社は、北川貞彦を中心に、弘瀬重正、宮地茂春、徳弘馬域郎、板垣鉾太郎、乾正士、北代健太郎、筒井楠太郎、麻田久寿衛らがメンバーとして活動しました。彼らは機関紙『江南新誌』を発行し、立志社傘下の有力な結社として運動を推進しました。

1880年（明治13年）には、「国会期成同盟」の規約編成委員となり、国会開設運動に貢献しました。また、立志社内では憲法調査局が設置され、北川貞彦は「憲法起草委員」として、片岡健吉、山田平左衛門、島地正存、坂本南海男、山本幸彦、植木枝盛、廣瀬爲興らとともに、憲法草案の起草に携わりました。植木枝盛が起草した『東洋大日本国国憲案』に対し、自由民権の精神にそぐわないという意見が多数寄せられたため、北川貞彦が新たに『日本憲法見込案』を起草しました。

その後、北川貞彦は「海南自由党」の結党に尽力し、法律学校「法学館」では民法・訴訟法の講師を務めました。しかし、1887年（明治20年）には保安条例により東京からの退去を命じられました。

政財界での活躍

東京を追われた後、北川貞彦は後藤象二郎の信頼を得て中央政界で活躍し、勧業銀行に入り実業界でも手腕を発揮しました。

1900年（明治33年）には、高知に戻り高知商工会議所書記長に就任しました。高知県物産陳列場監督を務める傍ら、『土陽新聞』の客員として、法制・経済に関する論説を発表しました。

死去とゆかりの地

北川貞彦は、1903年（明治36年）11月8日に48歳でこの世を去りました。

高知市の潮江天満宮には、北川貞彦が奉納した玉垣が残されており、同じく発陽社に属した民権家・弘瀬重正と並んで建てられています。これは、北川貞彦の功績と彼が民権運動にかけた情熱を今に伝える貴重な遺産です。

北川貞彦の思想と憲法草案

北川貞彦が起草した『日本憲法見込案』は、自由民権運動の理念を色濃く反映したものであり、当時の日本の憲法制定に大きな影響を与えました。彼の思想は、個人の自由と権利を尊重し、民主的な社会の実現を目指すものでした。彼の功績は、今日の日本の民主主義の礎を築いたものとして高く評価されています。

参考資料

• - 『北川貞彦(立志社「日本憲法見込案」起草者)の生涯と業績』外崎光広著、高知短期大学、1985年
• - 『舊各社事蹟』島崎猪十馬編、原本昭和6年(1931年)初版、自由民権百年高知県記念事業実行委員会、昭和56年(1981年)覆刻
• - 『明治時代高知舊各社事蹟』島崎猪十馬編(所収『土佐史談』第36号)、昭和6年(1931年)
• - 『高知県人名事典』高知県人名事典編纂委員会編、高知市民図書館、1971年
• - 『板垣精神』一般社団法人 板垣退助先生顕彰会 編纂、2019年、ISBN 978-4-86522-183-1 C0023
• - 『金子直吉傳』白石友治編、金子柳田両翁頌徳会、1950年

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