北朝鮮によるミサイル発射実験 (2016年)

2016年 北朝鮮によるミサイル発射実験

2016年2月7日、北朝鮮は、北西部の東倉里にある西海衛星発射場から、飛翔体「光明星」を南に向けて発射しました。北朝鮮はこれを「地球観測衛星・光明星4号の打ち上げ」と主張していますが、国際社会では弾道ミサイル発射実験と見なされています。この発射は、朝鮮半島だけでなく、世界的な緊張を高める事態となりました。

発射の概要

発射は平壌時間9時31分頃に行われました。事前に国際機関へ通知していた落下予告区域は、過去の「銀河3号」発射時とほぼ同じでしたが、射程は推定12,000-13,000kmとされ、「銀河3号」を上回る可能性があります。飛翔体は沖縄県上空を通過し、一部が宇宙空間で軌道に乗ったとされています。北朝鮮は、人工衛星の打ち上げに成功したと主張していますが、国際電気通信連合（ITU）は、衛星からの電波ビーコンを受信できていないと発表しています。しかし、北アメリカ航空宇宙防衛司令部（NORAD）は、物体が地球上の極軌道を周回していることを確認しており、この物体は現在も飛行を続けていると見られています。

各国の対応

この発射実験に対して、各国は以下のように対応しました。

アメリカ合衆国: THAADミサイルを韓国と北朝鮮の軍事境界線付近に配備する方針を決定。また、北朝鮮が核・ミサイル開発を続ける限り、国際経済の枠組みには参加できないと警告しました。
韓国: 日本やアメリカと電話会談を行い、北朝鮮への対応を協議。さらに、北朝鮮との共同運営であった開城工業団地から撤退を開始しました。
日本: 航空自衛隊が迎撃体制を採っていたものの、北朝鮮が発射後に国際機関への通告を解除したため、破壊措置命令を解除。衆議院は北朝鮮への抗議決議を全会一致で採択し、独自の制裁措置を検討。また、朝鮮学校への補助金中止も検討されました。
国際連合: 安全保障理事会が緊急会合を開き、北朝鮮を非難。安保理決議に対する重大な違反であると指摘し、核兵器運搬システムの開発に役立つロケット発射は重大な違反行為であるとしました。

北朝鮮の反発

北朝鮮は、この発射実験に対する国際的な非難に対して強く反発しました。祖国平和統一委員会は、開城工業団地に滞在する韓国人を追放し、北朝鮮側の労働者も撤収させ、韓国側の資産を凍結するなどの措置を発表。開城工業団地を閉鎖し、軍事統制区域としました。また、南北の軍事連絡通信と板門店の連絡通路も閉鎖しました。さらに、拉致問題の特別調査委員会の解体を宣言しました。

発射体の呼称について

北朝鮮は、この発射体を一貫して「非軍事目的の衛星打ち上げ」と主張しており、実際に衛星軌道にペイロードを投入した事実から、「ミサイル発射実験」ではなく「人工衛星用ロケット打ち上げ」と表記すべきだという意見もあります。しかし、ロケットと弾道ミサイルの技術的な差異はほとんどないこと、国連決議で「長距離弾道ミサイル技術を使う全ての発射」が禁止されていることなどから、このような呼称に関する議論は無意味だという意見も存在します。

その他の影響

この発射実験の影響は広範囲に及びました。日本では、沖縄都市モノレール（ゆいレール）がJアラート発動により一時運転を見合わせました。また、フジテレビ系列では『ONE PIECE』の放送が中断され、緊急報道特番に切り替わる事態となりました。この発射実験を契機に、各国は北朝鮮に対する制裁措置を強化し、北朝鮮のミサイル開発に対する国際的な警戒感が高まりました。

衛星について

発射された人工衛星は、通信が途絶えており機能していないとされていますが、2016年5月に国連宇宙局に地球観測衛星として登録されています。この事実が、北朝鮮が打ち上げを衛星目的としていたことを示唆しているとの見方もありますが、国際的な検証は行われていません。

結論

2016年の北朝鮮によるミサイル発射実験は、国際社会に大きな緊張をもたらしました。北朝鮮は、あくまで衛星打ち上げであると主張していますが、国際社会は弾道ミサイル技術の実験であると認識しており、制裁措置を含めた厳しい対応を続けています。この出来事は、北朝鮮の核・ミサイル開発問題の深刻さを改めて浮き彫りにし、国際的な安全保障における重要な課題として、今後も注視していく必要があります。

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