北村稔

北村稔（きたむら みのる、1948年 - ）は、日本の歴史学者で、中国近現代史を専門としています。立命館大学の名誉教授であり、法学博士の学位を有しています。また、日本「南京」学会の会員であり、国家基本問題研究所の理事も務めています。彼の研究は、中国近現代史における重要な出来事や人物に焦点を当て、多角的な視点から分析しています。

来歴

京都府出身の北村氏は、京都大学文学部史学科（現代史専攻）を卒業後、京都大学大学院博士課程を中途退学しました。その後、三重大学助教授を経て、立命館大学文学部教授を歴任しました。

研究内容

北村氏の研究は、第一次国共合作、文化大革命、日中戦争など、中国近現代史における重要な転換期に焦点を当てています。彼の研究は、既存の歴史解釈に疑問を呈し、新たな視点を提供することで知られています。特に、南京事件に関する研究は、国内外で大きな議論を呼びました。

著作

北村氏は、多数の単著、論文、共著、書評、エッセイ、訳書を発表しています。以下に主な著作とその内容について解説します。

『第一次国共合作の研究 現代中国を形成した二大勢力の出現』
この研究では、中国国民党と中国共産党の協力関係（国共合作）がどのように始まり、展開し、崩壊したのかを詳細に分析し、近代中国を動かした二大勢力の動向を明らかにしています。
『中国は社会主義で幸せになったのか』
この著作では、中華人民共和国の実質が「社会主義の皮をかぶった封建王朝」であるという論証を試みています。
『日中戦争:戦争を望んだ中国 望まなかった日本』（共著）
この書籍では、従来の日中戦争研究における「侵略戦争をおこした日本と侵略された中国」という枠組みを批判的に見直し、日中戦争の様々な側面を考察しています。
『「南京事件」の探究』
この著作では、南京軍事法廷や極東国際軍事裁判における南京事件の判決書を歴史学的な手法で検証しています。北村氏は、中国軍捕虜の殺害があったことを確認する一方で、一般市民に対する数十万単位の「大虐殺」が行われたという認識については、戦時宣伝の影響によるものとしています。また、南京事件に関する情報を提供したジャーナリストのハロルド・J・ティンパーリが、中国国民党の宣伝工作に関与していた可能性を指摘しています。彼は、南京での虐殺はなかったと主張しています。そして、旧日本軍が南京で「無秩序」や「混乱」に陥って便衣兵や捕虜を殺害したことはあったが、一般市民を対象とした虐殺はなかったとの結論に達しています。

反響

北村氏の研究は、肯定的な意見と否定的な意見の両方を引き起こしました。

肯定的な意見:

『諸君!』などの雑誌では、櫻井よしこ氏らが北村氏の説を肯定的に紹介しました。
東中野修道氏は、中国国民党の宣伝工作を記録した文書を発見し、ティンパーリの著作が中国国民党の宣伝書籍であることを補完しました。

否定的な意見:

『週刊金曜日』などのメディアでは、笠原十九司氏らが北村氏を「南京虐殺否定論者」として批判しました。
渡辺久志氏は、曽虚白の証言の誤りを指摘し、ティンパーリが中央宣伝部と関係があったという説に疑問を呈しました。
井上久士氏は、中央宣伝部の報告書を引用し、曽虚白の回想記の記述が誤りであると主張しました。
笠原十九司氏は、北村氏の主張を「トリック」であると批判し、ティンパーリが国民党の宣伝工作員でないときに執筆した書籍を、工作員として書いたかのように見せかけていると指摘しました。さらに、裁判の基礎的な知識を欠いているとも批判しました。

結論

北村稔氏の研究は、中国近現代史における重要なテーマについて、新たな視点を提供し、議論を活発化させる役割を果たしています。特に、南京事件に関する研究は、歴史認識を巡る議論において重要な位置を占めています。彼の研究は、歴史的事実を多角的に検証することの重要性を示唆しており、今後の歴史研究においても重要な示唆を与えるでしょう。

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