北条氏勝

北条氏勝（ほうじょう うじかつ）

北条氏勝は、後北条氏に属する大名であり、江戸時代初期の重要な人物です。彼は下総国岩富藩の初代藩主として知られています。氏勝は北条氏繁の次男で、北条綱成の孫です。また、北条氏舜の弟としても名を馳せています。

経歴の概要

北条氏勝の名前が初めて文書に登場したのは、天正10年（1582年）のことです。この時、「氏勝」と署名された文書が発給され、兄である氏舜が亡くなると家督を継承したと考えられています。翌年の文書では、彼は玉縄北条家代々の官途名である「左衛門大夫」を名乗っており、これが彼の公的な地位を示しています。

氏勝は、天正10年には伊豆に位置する大平新城の守備に当たり、武田方の戸倉城攻略にも参加しました。同年6月には本能寺の変が発生し、後北条家が徳川家康と領地を巡る争いに巻き込まれます。この際、氏勝は同族の北条氏忠と共に御坂峠に進出しますが、黒駒での合戦では家康の家臣らに敗北を喫します（これを天正壬午の乱と呼びます）。

さらに、天正12年（1584年）には上野厩橋城に入り、同年4月には下野の皆川城や太平山城での合戦にも参加しました。彼は天正14年（1586年）にも下野の戦闘に出征しています。

豊臣秀吉との関わり

天正18年（1590年）、豊臣秀吉による小田原征伐が始まります。氏勝は伊豆の山中城に籠もって抵抗しましたが、豊臣軍の猛攻の前に城は陥落します。落城の直前、氏勝は自害を試みましたが、家臣・朝倉景澄に止められ、弟たちの説得により城を脱出し、本拠地の相模玉縄城へ戻ります。

その後、玉縄城は徳川家康によって包囲されますが、戦闘は避けられました。松下三郎左衛門や龍寶寺の住職からの説得により、氏勝は同年4月21日に降伏します。その際、氏勝は下総方面の豊臣勢の案内役を務め、北条方の諸城の無血開城を実現させる手腕も見せました。秀吉はその降伏を容認し、事後に当時の将軍である足利義昭に豊臣方の優勢を伝えるように依頼しました。

徳川家への仕官

降伏後、氏勝は家康から下総の岩富1万石を与えられ、家臣として新たな生活を始めました。彼は領内の基盤整備を積極的に進める一方で、関ヶ原の戦いなどで功績を積んで徳川秀忠の信任を得るようになります。

氏勝は慶長16年（1611年）に53歳で亡くなります。彼の死後、家督は養子の氏重が引き継ぎました。伝えられるところによれば、氏勝が弟の繁広を嫌ったため、家康の外甥である氏重が養子となったとも言われています（『寛政重修諸家譜』より）。

氏勝の人生は、時代の波に翻弄されつつも、大名としての責任を全うし、後北条氏の名を次世代に残すために尽力したことがうかがえます。

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