北条綱成

北条綱成：武勇と外交に長けた後北条氏の重鎮

北条綱成（ほうじょう つなしげ/つななり）は、戦国時代から安土桃山時代にかけて活躍した後北条氏の武将です。相模国鎌倉郡玉縄城主であり、北条家の主力部隊「五色備え」の一つ、黄備え隊を率いました。その武勇と知略は、戦国時代において際立った存在でした。

生涯

後北条氏に仕えるまで

永正12年（1515年）に生まれたとされる綱成は、当初、今川氏の家臣・福島正成の子であったと伝えられています。しかし、父・正成の死後、小田原に落ち延び、北条氏綱の庇護を受けたとされています。この経緯については、父が飯田河原の戦いで討ち死にしたため、または花倉の乱で討たれたためなど、複数の説が存在します。北条氏綱は綱成を気に入り、娘を娶らせて北条一門に迎え、北条姓を与えました。綱成の名も、氏綱からの偏諱「綱」と父・正成の「成」を合わせたものとされています。その後、氏綱の子・北条為昌の後見役となり、為昌の死後、玉縄城主となりました。

ただし、綱成の出自については異論も多く、福島正成という人物が実在したのか、また父は福島氏ではなく伊勢氏の出身とする説もあります。また、母親についても、かつては北条為昌の妻とされていた養勝院殿が、実際には綱成の母親であるとされています。

「地黄八幡」の闘将

天文6年（1537年）から上杉家との戦いをはじめ、各地を転戦しました。北条五色備えでは、黄備えを率いて活躍しました。天文15年（1546年）の河越夜戦では、半年余りの籠城戦に耐え抜き、本軍と連携して敵を打ち破り、北条軍の大逆転勝利に大きく貢献しました。この功績により、河越城主も兼ねたとされています。その後も、北条家随一の猛将として、第三次川中島の戦い（上野原の戦い）や国府台合戦などで武功を挙げました。武田信玄との三増峠の戦いでは、配下の鉄砲隊が武田軍の将を討ち取ったと伝えられています。

元亀2年（1571年）に北条氏康が病死すると、綱成も家督を子の氏繁に譲り、隠居して「上総入道道感」と号しました。天正15年（1587年）に73歳で病没し、玉縄の龍寶寺に葬られました。

人物・逸話・功績

綱成は若い頃から武勇に優れ、常に先陣を切って戦いました。毎月15日には身を清めて八幡大菩薩に戦勝を祈願したといわれ、その強さから常勝軍団として名を馳せました。合戦では、朽葉色に染めた練り絹に「八幡」と書かれた旗を指物としており、その旗色から「地黄八幡」と称されました。これは「直八幡（じきはちまん）」に通じることから、自らが八幡の正統な流れを汲む者であるというアピールでもあったとされています。

「地黄八幡」の旗指物は、現在、長野県長野市松代の真田宝物館に現存しています。これは、元亀2年（1571年）に綱成が守備していた駿河深沢城を武田信玄に開城した際、城内に放置されていたもので、信玄は「左衛門大夫（綱成）の武勇にあやかるように」と、家臣の真田幸隆の息子・真田信尹に与えたとされています。

少年期には、当時の当主であった氏康に代わり、北条家当主に擬する動きもあったとされています。氏康とは義兄弟であり、同年齢であったことから信頼も厚く、氏康の名代として外交や軍事の全権を与えられることもあったとされています。戦場では常に勇敢で、特に野戦では自ら先頭に立って突撃し、「勝った！勝った！」と叫びながら敵陣に斬り込んだと伝えられています。その武勇は上杉軍や武田軍からも恐れられ、深沢城の戦いでは兵力差で圧倒的に不利な状況にもかかわらず、武田軍を苦戦させました。

また、武勇だけでなく、白河晴綱、長尾当長、蘆名盛氏らとの外交交渉も担当し、外交使者としても活躍しました。このように、綱成は武勇だけでなく、外交手腕にも長けた人物でした。

北条綱成は、その生涯を通じて後北条氏のために尽力し、戦国時代を代表する武将の一人として、後世にその名を残しました。

もう一度検索