北楯利長

北楯 利長（きただて としなが）

北楯利長は、戦国時代から江戸時代の初期にかけて活躍した武将であり、最上氏の家臣でした。彼は出羽国の田川郡に位置する狩川城の城主として知られ、庄内平野に大きな影響を与えた北楯大堰を建設したことで特筆されています。利長の時代背景や彼の業績は、当時の農業の発展に大きく寄与しました。

略歴

利長は、山形城主である最上義光の片腕として多くの戦に従事し、慶長6年（1601年）には義光が上杉景勝を打ち破った際、田川郡の狩川城において3,000石の所領を得ました。しかし、彼が領有していた地域は水捌けが悪く、農業においては灌漑の整備が急務となりました。

そのため、利長は慶長16年（1611年）に義光に対して立谷沢川の水を引く疏水の建設を許可してほしいと願い出ます。この工事は非常に難易度が高いとされ、多くの反対意見が寄せられましたが、新関久正の助言もあって、義光は翌年の慶長17年（1612年）に工事を開始するよう指示しました。利長に与えられた指揮権のもと、庄内一帯から集められた7,400名の人夫が工事に従事しました。

工事は順調に進み、同年7月には総延長30kmを超える堰が完成しました。義光はこれを「庄内末世の重宝」と称賛し、利長にさらに300石を加増するだけでなく、今後この疏水を用いて開発される新田の石高を全て利長が所有することを約束しました。

利長が築いた北楯大堰によって、4,200町歩もの新たな農地が開かれ、88の部落が発展しました。その結果、利長の所領は当初の10倍にあたる30,000石にまで増えました。

元和8年（1622年）、最上氏が改易されると、利長は所領を失いましたが、彼の子である助次郎（後の正久）が新たに庄内に入封した酒井忠勝に仕官し、姓を北楯に改めて300石を得ることができました。隠居した利長も100石を給付され、その後もある程度の生活を保つことができました。

利長は寛永2年（1625年）10月20日に78歳で逝去しました。彼の功績は後世にも評価され、1778年には水神社が建立され、北楯水神として祀られました。大正4年（1915年）には従五位が追贈され、さらに大正8年（1919年）には、この神社が狩川城の跡地に設けられた楯山公園へ移転し、北舘神社として現在も存在しています。

この公園内には利長の像が建てられており、彼の業績が地域社会において重要な位置を占めていることを示しています。利長の生涯は、当時の厳しい環境を乗り越えて地元の発展に貢献した武将として、今も語り継がれています。

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