北沢川 (東京都)

北沢川：暗渠に眠る、かつての清流

北沢川は、かつて東京都世田谷区を流れていた目黒川の支流です。現在はその姿を地中に隠し、下水道へと姿を変えましたが、かつては地域の人々の生活を潤す重要な川でした。

北沢川の流路

北沢川は、現在の東京都立松沢病院付近を源流とし、玉川上水からの分水も取り入れていました。そこから南東へ流れ、経堂駅の北側で東へ向きを変え、山下駅のすぐ北で東急世田谷線をくぐり、梅ヶ丘駅の東で小田急小田原線を越えていました。さらに東南東へと流れ、環七通り、茶沢通り、淡島通りを過ぎ、池尻大橋駅の西側で烏山川と合流し、目黒川となります。

流域は、上北沢、桜上水、赤堤、宮坂、豪徳寺、松原、梅丘、代田、代沢、池尻、三宿といった地域を通過していました。

支流

北沢川には、左岸（北側）にいくつかの支流がありました。現在はいずれも暗渠となっています。

森厳寺川: 北沢中学校付近から下北沢駅の東を通り、茶沢通りのルートを南下し、代沢小学校の端で北沢川に合流していました。
だいだらぼっち川: 森厳寺川の支流で、下北沢駅の西側を南流していました。源流は湧水が豊富で、「ダイダラ坊の足跡」と呼ばれ、これが「代田」の地名の由来になったと言われています。

歴史

北沢川は、元々は水量の少ない川でしたが、1658年に玉川上水からの分水が認められ、北沢用水として一帯の田畑を潤しました。江戸時代の下北沢村の開拓に深く関わっていたのです。

しかし、昭和時代に入ると周辺の都市化が進み、水質が悪化。1970年代から1980年代にかけて、ほぼ全域が暗渠化され、現在は下水道（北沢幹線）として利用されています。

北沢川緑道

暗渠化された北沢川の地上部は、平成時代に入ると緑道として整備されました。桜上水5丁目付近から下流のほとんどが緑道となり、区民の憩いの場となっています。

1995年からは、東京都の「城南三河川清流復活事業」により、高度処理水が目黒川に通水されました。これを受け、世田谷区は高度処理水の一部を利用して、北沢川と烏山川の暗渠上の緑道に沿って人工のせせらぎを造成しました。

北沢川のせせらぎは、環七通りを横切る「宮前橋」より下流の全区間で完成しており、桜並木とともに親しまれています。せせらぎの計画水量は2,200m3で、高度処理水をさらに浄化してから放流しています。この水は、烏山川との合流地点以下では「目黒川緑道」を流れ、池尻大橋地点付近で目黒川へと放流されます。

水辺には鯉や小魚、カモ類などが見られ、中流あたりにはザリガニが多く生息しています。

1997年には、ふれあいの水辺（北沢川緑道）が手づくり郷土賞を受賞しました。

注意点

一部のマンホールの近くなど、工事作業員の出入りがある場所や通風口の近くでは、下水の臭いがすることがあります。

かつての北沢川は、地域の生活を支える重要な存在でしたが、都市化の波にのまれ、姿を変えました。しかし、緑道として整備され、清流復活の試みも行われています。今では、地域住民の憩いの場として、新たな役割を担っています。

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