北海鋼機前駅

北海鋼機前駅

北海道江別市東野幌町にかつて存在した北海鋼機前駅は、夕張鉄道線に属していた廃駅です。この駅の大きな特徴は、鉄道とバスとの連携拠点として誕生した点にあります。

開設と役割

駅が開設されたのは1956年（昭和31年）12月1日でした。当時の駅名は「野幌バス停留所前駅」と名付けられ、夕張鉄道が運行していた札幌大通行きの連絡バスが当駅を発着するようになりました。それまでバスとの連絡が行われていた上江別駅での機能が、この新しい駅に移管された形です。これは、鉄道会社が自社のバス路線との接続を強化し、利便性を向上させるための戦略的な措置であったと言えます。

駅名の変遷と発展

開設当初はバス連絡駅としての性格が強かった当駅ですが、周辺環境の変化に合わせてその名称と役割も変化していきます。1964年（昭和39年）7月20日、駅名が「北海鋼機前駅」に改称されました。これは、駅の近くに北海鋼機の工場が進出したことに伴うもので、地域における工場の存在感が高まったことを示しています。さらに同年9月14日には、北海鋼機工場へ繋がる専用鉄道の運行が始まり、当駅は工場専用鉄道との接続駅としての機能も持つようになりました。これにより、物資輸送における駅の重要性が増したと考えられます。

構造と設備

北海鋼機前駅は、単式ホーム1面1線を持つ地上駅でした。特筆すべきはその構造で、ホーム上に直接連絡バスが乗り入れて発着できるようになっていました。これは、鉄道からバスへの乗り換えをスムーズに行うための独特な設計であり、駅の開設理由であるバス連絡機能を物理的に実現したものでした。また、駅にはバス車庫も設置されており、バス路線の運行拠点としての役割も兼ねていたことがうかがえます。

廃止への道のり

夕張鉄道線全体の輸送量が減少する中で、北海鋼機前駅もその影響を受けます。1974年（昭和49年）4月1日には旅客営業が休止され、実質的に駅としての機能が停止しました。そして、翌1975年（昭和50年）4月1日、夕張鉄道線の廃止に伴い、北海鋼機前駅も正式に廃駅となりました。開設からわずか約18年半という短い歴史に幕を下ろしたことになります。

廃止後の痕跡

駅が廃止された後も、ホームの一部はしばらくの間、夕鉄バスの乗り場として利用され続けました。1990年代頃まではバスが乗り入れていたとされています。ホームや信号機などの駅の設備も、2000年頃まではその姿をとどめていましたが、その後撤去されてしまいました。現在、かつて駅があった場所はパチンコ店になっており、駅の痕跡は何も残されていません。

記念碑

しかし、駅の歴史を伝えるものは全くないわけではありません。北海鋼機工場のすぐ横を通る「きらら街道」（広域農道）沿いに、夕張鉄道線の歴史を記した記念碑が建立されています。これはかつて使用されていた信号機を再利用したもので、信号機の存在が鉄道がここを通っていた証として、静かに歴史を語り継いでいます。

駅の周辺と隣接駅

駅の近くには、現在も夕鉄バスの野幌営業所があり、バスターミナルが併設されています。また、駅名の由来となった北海鋼機の工場も引き続き存在しています。

夕張鉄道線における北海鋼機前駅の隣接駅は、野幌駅と上江別駅でした。路線廃止後、当駅の至近にJR北海道の函館本線高砂駅が1986年（昭和61年）に開業しています。

北海鋼機前駅は、短命ながらもバスとの連絡機能という独特の役割を持ち、地域産業とも深く結びついていた駅でした。その物理的な痕跡は消え去りましたが、記念碑がその存在を今に伝えています。

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