北畠政郷

北畠政郷（きたばたけ まささと）

北畠政郷は、室町時代中期における武将および公家として知られています。伊勢国司である北畠家の第5代当主で、名は政具（まさとも）、政郷（まささと）、政勝（まさかつ）と改名しました。彼は多気御所を拠点に活動し、その生涯は波乱に満ちたものでした。

生涯の概要

政郷は元服の際、室町幕府第8代将軍である足利義政から偏諱を受けて政具と名乗りました。文明3年（1471年）に父・北畠教具が亡くなった後、家督を相続し、北畠家の当主となりました。この際、名前を政郷と改めたとされています。彼は家督を引き継ぐと同時に、伊勢の守護に任命され、北伊勢進出に名乗りを上げました。しかし、文明11年（1479年）には一色義春が新たに守護として任じられたため、北伊勢の国人である長野氏との抗争が再燃しました。

政郷は北伊勢での戦いにしばしば挑みましたが、大きな戦闘で敗北を繰り返し、文明12年（1480年）には長野氏との和解を余儀なくされました。この一連の戦いの後、彼は名を政勝と改めることになります。文明18年（1486年）に出家して無外逸方と号した政郷は、40歳前後で嫡男の具方に家督を譲りました。彼の生涯には、宇治山田合戦への介入という記録もあり、明応4年（1495年）には材親との内紛において、木造師茂の側を支援したともされています。

彼の生没年については諸説あり、永正5年（1508年）の11月または12月に60歳か62歳で多芸にて亡くなったと伝えられています。

人物像

政郷は弓道や馬術に優れた武士であり、さらに和歌の才能も持つ教養ある人物として知られています。仏教にも深い関心を寄せ、浄眼寺を開基したり、開眼供養を行ったりしました。一方で、彼は公家からあまり敬遠されていたようで、父が叙位されたのに対し、政郷自身は公家としては従四位上の右近衛権中将に留まり、昇任については「間違いでは」と感じられることもあったようです。

肖像画

文明10年（1478年）に設立された浄眼寺には、政郷自身の生前に描かれた寿像があります。この肖像画は、立った姿を描いた珍しい作品であり、彼が右上の日輪を見上げている姿が印象的です。賛は政郷が自身で作成したもので、開山の大空玄虎が1494年に書したものです。この賛文には「悟りを得れば運命に翻弄されることもない。万物は本来、生じも滅びもしない」という深い意味が込められています。

官歴

政郷の官歴については、北畠家に関する記録に基づいており、以下のような叙任を受けました。

• - 時期不詳: 叙爵（従五位下）、右近衛少将
• - 長禄4年（1460年）正月5日: 従五位上
• - 寛正5年（1465年）11月6日: 正五位下
• - 文明8年（1476年）正月6日: 従四位下
• - 文明10年（1478年）8月17日: 従四位上
• - 時期不詳: 右近衛権中将。

系譜

政郷の父は北畠教具で、母については不詳です。長男の北畠材親や大河内親忠、孝縁、神戸具盛らが彼の子女であり、特に材親は後に権大納言となりました。また、彼の系統から田丸氏が誕生しました。政郷の一族は様々な地に影響を及ぼし、その子孫たちは新たな道を切り開きました。

北畠政郷はその多面的な生涯を通じ、室町時代の武士としての姿を豊かに描き出しています。

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