北陸 (列車)

寝台特急「北陸」：東京と北陸を結んだ夜の旅路

かつて上野駅と金沢駅を結び、人々の旅を支えた寝台特急「北陸」。その歴史は、単なる移動手段にとどまらず、時代の変遷や鉄道技術の進化、そして人々の生活様式を映し出す鏡でもありました。

「北陸」誕生前夜：戦前の夜行列車

「北陸」のルーツは、1922年に上野駅 - 金沢駅間で運行を開始した急行列車に遡ります。当初は773・772列車として、信越本線を経由し夜の帳の中を駆け抜けました。その後、列車番号や運転区間の変更を経て、戦時下の1944年に一旦はその姿を消します。

しかし、終戦後の1947年、上野駅 - 金沢駅・新潟駅間を結ぶ夜行列車として復活。1950年には、ついに「北陸」の名が与えられました。当時は、東京と北陸を結ぶ夜行列車でありながら、北陸と大阪を結ぶ昼行列車という二つの顔を持っていました。

特急「北陸」の時代：快適な移動と個室化

1975年、夜行急行「北陸」は寝台特急へと格上げされ、東京と北陸を結ぶ夜行列車は、寝台特急「北陸」と急行「能登」「越前」の3本立てとなりました。しかし、1982年の上越新幹線開業に伴い、「越前」が廃止。以降は「北陸」と「能登」が、それぞれの役割を担いながら北陸路を支えました。

特急「北陸」は、短い走行距離ながらも、寝台特急としての快適性を追求しました。夜行高速バスとの競争や、「能登」との差別化を図るため、早い段階から寝台の個室化を進め、B寝台個室「ソロ」を導入するなど、多様なニーズに応える努力を重ねました。

終焉とその後：時代の変化と列車の役割

しかし、時代の流れには逆らえませんでした。航空機や夜行高速バスの台頭により利用客が減少し、車両の老朽化も進んだことから、2010年3月13日のダイヤ改正をもって、「北陸」は惜しまれつつ廃止されました。

同時期に急行「能登」も定期列車から臨時列車へと格下げとなり、長年親しまれてきた上野駅発着の北陸方面夜行列車は、その姿を大きく変えることとなりました。

停車駅

上野駅 - 大宮駅 - 高崎駅 - （直江津駅） - 糸魚川駅 - 魚津駅 - 富山駅 - 高岡駅 - 津幡駅 - 金沢駅

※直江津駅は上り列車のみ停車

使用車両：14系客車と機関車

「北陸」に使用されたのは、JR東日本の14系客車でした。2号車にはシャワー室が設置され、長旅の疲れを癒すことができました。牽引機関車は、上野駅 - 長岡駅間がEF64形電気機関車、長岡駅 - 金沢駅間がEF81形電気機関車でした。

長岡駅では進行方向が変わり、機関車の付け替え作業が行われていました。

エピソード：チェックアウトサービス

1989年から1991年まで、下り列車限定で「チェックアウトサービス」が実施されていました。これは、金沢駅到着後も9時まで寝台を利用できるというもので、ビジネス客を中心に好評を博しました。しかし、積極的なPRが行われなかったため、あまり知られていませんでした。

語り継がれる「北陸」の記憶

寝台特急「北陸」は、その短い生涯の中で、多くの人々の旅を彩り、様々なドラマを生み出してきました。列車はなくなっても、その記憶は、鉄道ファンやかつての乗客たちの心の中に、いつまでも残ることでしょう。

参考文献

今尾恵介、原武史『日本鉄道旅行歴史地図帳-全線・全駅・全優等列車-』 6号・北信越、新潮社、2010年。ISBN 978-4-10-790040-1。
寺本光照『国鉄・JR列車名大事典』中央書院、2001年。ISBN 4-88732-093-0。

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