医道審議会

医道審議会とは

医道審議会は、厚生労働省設置法に基づき設置された、医療従事者の免許に関する重要事項を審議する機関です。具体的には、医師、歯科医師、薬剤師、看護師などの免許の取消や停止といった行政処分、国家試験の内容、死体解剖資格の認定など、多岐にわたる事項について、厚生労働大臣に答申を行います。

組織

医道審議会は、30人以内の委員で構成され、必要に応じて臨時委員や専門委員が任命されます。委員は、日本医師会や日本歯科医師会の会長、学識経験者などから選ばれ、厚生労働大臣によって任命されます。委員の任期は2年で、再任も可能です。審議会には、専門分野ごとに分科会が設置されており、各分科会で専門的な審議が行われます。

分科会

医道分科会
医師分科会
歯科医師分科会
保健師助産師看護師分科会
理学療法士作業療法士分科会
あん摩マッサージ指圧師、はり師、きゅう師及び柔道整復師分科会
薬剤師分科会
死体解剖資格審査分科会

また、必要に応じて、各分科会に部会が設置されることもあります。

権限

医道審議会の主な権限は、以下の通りです。

医師、歯科医師、薬剤師、保健師、看護師、理学療法士、作業療法士などの免許の取消・停止などの行政処分とその手続き
看護師等の人材確保に関する指針の作成
死体解剖保存法に基づく死体解剖資格の認定
各種国家試験の内容・合格基準の作成
* その他、医療に関する諮問への答申

問題点と批判

医道審議会は、医療従事者の不正行為をチェックする役割を担っていますが、実際にはその機能が十分に果たされていないとの批判があります。例えば、問題行為を繰り返す医師に対して甘い処分しか行わず、免許剥奪に至るケースが非常に少ないという指摘があります。このため、結果的に医療従事者による悪質な行為を助長し、被害者を増やしているとの批判も存在します。

さらに、厚生労働省は、行政処分を受けた医療従事者の氏名や勤務先を公開しておらず、医業停止処分中の者でも医師を名乗ることが許されています。そのため、患者は行政処分を受けた医師を判別することができず、医療を受ける際にリスクを抱えることになります。また、医師に対する行政処分は、刑事事件で有罪判決が確定した場合に行われると解釈されているため、医療過誤を起こした医師が示談によって刑事告訴を取り下げさせれば、行政処分の対象にならないという問題点も指摘されています。

医師免許の取消しと処分の要件

医師法に基づき、医師が以下のいずれかに該当する場合、厚生労働大臣は医道審議会の意見を聞いた上で、戒告、3年以内の医業停止、または免許取消の処分を行うことができます。

1. 心身の障害により医師の業務を適正に行うことができない場合
2. 麻薬、大麻、またはあへんの中毒者である場合
3. 罰金以上の刑に処せられた場合
4. 医事に関し、犯罪または不正の行為があった場合

医道審議会は、2002年に行政処分に関する指針を公表し、その後も改訂を行っていますが、審議が非公開のため、個別の処分理由を検証することはできません。

医師に対する行政処分の流れ

1. 法務省から厚生労働省に、罰金以上の刑に処せられた医師の情報が提供される。
2. 厚生労働省は、都道府県庁を通じて、対象医師に行政処分対象事案報告書の提出を求める。
3. 厚生労働省は、報告書と判決謄本を基に、意見陳述の手続きを決定する。
4. 免許取消が想定される場合は意見聴取、それ以外の場合は弁明聴取を経て、処分が決定される。

医業停止と免許取消の違い

医業停止は、期間満了後に医師としての業務に戻ることができますが、免許取消は原則として「永久剥奪」となり、再び医師免許が交付されることはありません。ただし、一定の条件を満たせば、免許を再交付される可能性もあります。再免許の要件は、取消理由となった事項に該当しなくなったこと、および処分から5年が経過していることなどが挙げられます。

行政処分の厳格化

以前は刑事事件で有罪判決が確定しないと行政処分が下されませんでしたが、近年では、民事訴訟で医療行為の責任が認定された場合でも行政処分が下される可能性があります。

行政処分を受けた医師への再教育

医業停止処分を受けた医師は、期間満了後に特別な条件なしに医業を再開できます。厚生労働省は現在、行政処分を受けた医師に対する再教育を検討しており、医師自身の倫理観や技術を再確認し、適切な医療現場への復帰を促すことを目指しています。

しかしながら、医業停止処分を受けていない医師であっても、医療ミスを繰り返すなど、医師としての能力や適性を欠く者が、免許を剥奪されることなく、医療行為を続けているという問題も指摘されています。

まとめ

医道審議会は、医療の質を維持し、患者の安全を守るために重要な役割を担っています。しかし、その機能には多くの問題点があり、改善が求められています。医療従事者に対する処分内容の透明性の向上、再教育の充実、再発防止策の強化などが今後の課題と言えるでしょう。

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