十一年式七糎加農

十一年式七糎加農（11ねんしき7せんちかのん）

十一年式七糎加農は、1922年に大日本帝国陸軍によって制式制定された加農砲です。この砲は主に陣地固定式で、口径75mm、全備重量は3,734kgです。

概要

この砲の特筆すべき点は、射界が360度全周にわたり、俯仰角は-7度から77度まで調整可能であることです。これにより、沿岸防御、防御施設の攻撃、防空射撃など多様な用途に対応して設計されています。具体的な性能として、弾量6.54kgの砲弾を砲口初速720m/sで発射し、最大射程は13,800m、最大射高は9,100mに達します。この火砲は、永興湾要塞や下関要塞、鎮海湾要塞などに配備されていました。また、大阪造兵廠第一製造所では1942年までに計38門が製造されています。

この砲の開発は1917年に始まり、実験が提案されたのは8月でした。9月には提案が採用され、設計がスタートし、1918年にほぼ設計が完了しました。試製のため大阪砲兵工廠にて試作が行われ、1921年に試作砲が完成。その後、様々な試験を経て1922年に正式に採用されました。1934年には高射照準具や防楯の改修が行われ、1936年には閉鎖機に改良が加えられ、制式改正が完了しました。

特徴

十一年式七糎加農の最大の特徴は、水平射撃と対空射撃をスムーズに切り替えられる点です。防楯は開閉式で、高射撃の際には砲の両脇に開かれます。砲床はコンクリート製の固定型が基本ですが、野戦用の移動型も使用可能です。ただし、野砲のような機動力はありません。

構造

この砲は固定砲床式ですが、野戦での運用には鋼製の移動砲床が必要です。砲身尾部には半自動開閉式の閉鎖機が備わり、上部には駐退複座器、下部はテーパーのついた円筒形の砲座と連結しています。砲座は地面に埋設され、砲右側には方向照準転把や高射照準具、後方には信管測合機が取り付けられています。この信管測合機は、砲弾の信管を適切な起爆時刻に調整するための装置です。

砲身のライフリングは右回り、28条の等斉で深さは0.75mm、傾度は6度45分です。また、砲身上部には駐退復座機が搭載されており、駐退機は水圧式で液体の混合物を使用します。発射後には砲身が後座し、自動的に薬室を解放するため、迅速な連射が可能です。

弾薬

十一年式七糎加農には多種類の砲弾が用意され、具体的には九四式榴弾や九〇式高射尖鋭弾、榴弾、十年式榴弾、九五式破甲榴弾などが使用されました。これらの弾薬は、それぞれの用途に応じて異なるサイズや装薬が設定されています。

結論

十一年式七糎加農は、優れた操作性と高い性能を兼ね備えた火砲であり、多様な戦闘シーンでの利用が期待されました。これにより、大日本帝国陸軍の戦力拡充に貢献した重要な兵器の一つです。

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