十九の春

「十九の春」について

「十九の春」とは、沖縄音楽のひとつで、1972年に沖縄県で発表されました。この曲は俗謡として知られていますが、20世紀に作られた流行歌であり、新民謡としての位置付けもされています。先代の古典民謡や琉球民謡とは異なり、一部では民謡と見なされることもあります。

歌詞の内容

楽曲の歌詞は、既に結婚している男性に恋をした女性の切ない片思いをテーマにしています。このような深い感情の表現が、多くの人に感動を与えています。また、歌詞は本州で一般的に用いられる七五調の形式で構成されており、琉歌の八八八六調とは明確に異なる点が特徴的です。

「十九の春」は、昭和初期に流行した「ラッパ節」と呼ばれる別の歌と関連があると考えられています。「ラッパ節」を作詞した添田唖蝉坊は、その当時時代風刺的な歌詞を書いたことで有名です。しかし、「十九の春」には「ラッパ節」に見られる合の手が含まれていません。

曲調と旋律

この楽曲の旋律は、軽快さを感じさせ、軍歌の代表的な曲ともされる「ラッパ節」とは全く異なるものです。特に、鹿児島県に由来する「与論小唄」が元となっていることが知られています。この曲は沖縄本島では「尾類小（じゅりぐゎー）小唄」として広まり、第二次世界大戦前に那覇の遊廓で人気を博しました。近年では「吉原小唄」と呼ばれることもあります。

1972年に、与那国島出身の本竹祐助がこの曲を採録し、「十九の春」としてレコード化しました。この楽曲は数多くのアーティストに演奏されており、特に沖縄を訪れた田端義夫がこの曲に魅了されたことが、1975年のレコード化につながり、全国的なヒットを果たしました。

デュエットとカラオケ

「十九の春」はカラオケのデュエットソングとしても人気があります。1972年に本竹祐助と津波洋子によって男女の対話形式の歌詞にアレンジされたため、交互に歌えるスタイルが独特な魅力を持っています。この際には、与那国民謡の歌手である津波洋子の父である津波恒徳が三線で、兄の津波恒英がギター伴奏を担当しました。

歴史的背景

「与論小唄」は昭和初期に登場した「与論ラッパ節」に起源を持ち、この曲は明治末期から本州や九州でも流行していました。「ラッパ節」は多くの地域で替え歌が作られ、特に九州の福岡県では、炭鉱労働者たちによって労働歌として歌われたこともあります。沖縄や与論から出稼ぎにきた人々も多いため、与論に新しい歌詞が生まれた可能性があります。

「与論小唄」の旋律については、琉球音階とは異なり、演歌と同様の音階に基づいています。これは奄美群島や八重山民謡とも共通しています。

「与論小唄」は第二次世界大戦前に沖縄本島に持ち込まれ、那覇の遊廓で人気を得ました。さらに、米軍の魚雷攻撃で沈没した嘉義丸の犠牲者を偲ぶ歌として有名な「嘉義丸の歌」も、この旋律に似ていると言われています。

ディスコグラフィと現在の人気

1972年、本竹祐助と津波洋子によるレコード「十九の春」は、沖縄でヒットしました。1975年に田端義夫がこの曲をカバーし、全国的に認知されるようになりました。21世紀に入っても、神野美伽や若月あやなど多くのアーティストがカバーしており、根強い人気があります。このように「十九の春」は、そこに込められた深い感情と歴史を通じて、今日でも人々の心を打ち続けています。

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