十五銀行

十五銀行：華族の設立した銀行とその波乱の歴史

十五銀行は、明治時代から昭和時代にかけて存在した日本の銀行です。その歴史は華族の設立、日本経済への貢献、そして昭和金融恐慌による危機、そして終戦後の統合と、数々のドラマを秘めています。本稿では、十五銀行の興亡と、その後の歴史的影響について詳細に見ていきます。

華族銀行の誕生と隆盛

1877年（明治10年）、岩倉具視の呼びかけにより、徳川慶勝、山内豊範といった錚々たる華族らが発起人となり、秩禄処分によって得られた金禄公債を原資に十五銀行が設立されました。有力華族の出資により設立されたことから「華族銀行」と呼ばれ、宮内省本金庫としての役割も担い、高い信用を享受していました。

十五銀行は、日本の経済発展に大きく貢献しました。特に、鉄道事業への投資は顕著で、日本鉄道株式会社の設立を支援し、その発展に大きく貢献しました。設立当時の十五銀行は、全国148の国立銀行の中で、総資本額の約47.3%を占める巨大銀行でした。

昭和金融恐慌と経営危機

しかし、1927年（昭和2年）の昭和金融恐慌は十五銀行にも大きな打撃を与えました。取り付け騒ぎが発生し、銀行は一時休業に追い込まれ、事実上倒産しました。

この危機に際し、銀行の代表者であった松方巌公爵（元首相松方正義の長男）は、私財の大半を投じて銀行の立て直しに尽力しました。爵位返上を申し出るなど、その責任の重さを示す行動に出ました。他の取締役も同様に私財を提供し、危機の収拾に当たりました。

株主には多数の華族や宮内省が含まれており、倒産は多大な損失を生みました。武家華族は倒産前に資産の移転を図ったものの、公家華族の中には多額の損失を被った者もいました。

帝国銀行への吸収合併とその後

その後、十五銀行は帝国銀行に吸収合併されました（1944年）。店舗は帝国銀行木挽町支店、その後三井銀行木挽町支店を経て、銀座八丁目の三井銀行新橋支店へと引き継がれていきました。

十五銀行本店跡地には、後に三井系企業によるホテルが建設されました。このホテルは、十五銀行本店建物を模したデザインが取り入れられています。この事実は、十五銀行の歴史が、現在もなお、銀座の街に痕跡を残していることを示しています。

十五銀行の遺産

十五銀行の行章は桜花であり、「桜の銀行」として知られていました。この桜の意匠は、帝国銀行、そして三井銀行へと受け継がれ、その後もさくら銀行（現在の三井住友銀行）の行章に受け継がれ、現代までその影響が確認できます。

不動産賃貸やレジャー施設運営を行うホウライ株式会社も、元々は十五銀行の子会社である蓬莱殖産を起源とする企業です。

詩人・歌人としても知られる黒田忠次郎は、十五銀行に勤務した経歴を持ちます。

十五銀行の歴史は、華族の隆盛と没落、日本の近代化、そして激動の昭和という時代を反映した、ドラマチックな物語です。その歴史は、現在でも様々な形で私たちの社会に影響を与え続けています。

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