十六分音符

十六分音符（じゅうろくぶおんぷ）

音楽の記譜に用いられる「十六分音符」は、音の長さを定める記号の一つであり、八分音符の丁度半分の時間演奏される音の長さを表します。この音符が記譜法に登場したのは15世紀に遡り、当時の定量記譜法における「セミフューザ（semifusa）」に相当する記号として初めて文献に見られます。

十六分音符の基本的な外観は、塗りつぶされた楕円形の符頭と、そこから伸びる直線的な符幹、そして符幹の末端に二つ付いた旗によって特徴づけられます。個々の十六分音符は常に二つの旗を持って表記されますが、楽譜上で二つ以上の十六分音符が連続して現れる場合、通常はそれぞれの旗を個別に描くのではなく、符幹を「桁（けた）」と呼ばれる太い線で連結して表記されます。これにより、視覚的に音符のまとまりやリズムが把握しやすくなります。

この音符に対応する記号として「十六分休符」があり、これは十六分音符と同じ長さだけ演奏を休止することを指示します。十六分休符もまた、固有の形（数字の「7」や「L」が組み合わさったような形に二つの旗に似た装飾が付いたもの）をしており、同じ時間的価値を持ちます。

符幹を持つ他の音符と同様に、十六分音符の符幹の向きは五線譜上の位置によって変化するという規則があります。符頭が五線譜の中央の線（中線）よりも下に書かれる場合（特に声楽譜で中線上に書かれる場合も含む）、符幹は符頭の右側から上向きに描かれます。一方、符頭が中線上（器楽譜の場合）または中線よりも上に書かれる場合は、符幹は符頭の左側から下向きに描かれます。ただし、複数の音符が桁で連結される場合は、そのまとまりの中で一番上または下にある音符の位置に基づいて符幹の向きが決まることもあります。

旗や桁の描かれ方にも一定の規則があります。旗は常に符幹の右側に付加されます。上向きの符幹を持つ音符の場合、旗は符幹の上部から始まり、右下に向かってカーブを描きます。下向きの符幹を持つ音符の場合、旗は符幹の下部から始まり、右上に向かってカーブを描きます。桁で連結される場合も同様で、複数の符幹が一本の桁で結ばれます。

この桁による連結は、十六分音符同士だけでなく、八分音符や三十二分音符といった他の短い音価を持つ音符と組み合わせて用いられることもあります。音符の種類に応じて必要な数の桁（八分音符は一つ、十六分音符は二つ、三十二分音符は三つなど）が適切に描かれます。三十二分音符や六十四分音符のような、さらに短い音価を表す音符にも、十六分音符の記譜法と類似したルール（符頭、符幹、旗の数や桁による連結など）が適用されます。

デジタル環境での表現としては、UnicodeにおいてはU+266Cというコードポイントが、桁で連結された二つの十六分音符（♬）を表す記号として定義されています。

歴史的な起源である定量記譜法のセミフューザは、現在の多くの言語、例えばスペイン語やカタルーニャ語、ポルトガル語などでは、十六分音符よりもさらに短い音価である六十四分音符を指す言葉として使われており、時代の経過とともに音楽用語の意味が変化してきた興味深い例と言えます。

このように十六分音符は、その独特の形状と、五線譜上の位置や他の音符との組み合わせによる様々な表記規則を持つ、音楽のリズムを表現する上で欠かせない基本的な音符の一つです。

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