十字石

十字石：十字状結晶の美しい鉱物

十字石は、赤褐色から黒色を呈する単斜晶系のネソケイ酸塩鉱物です。化学組成はFe₂⁺₂Al₉O₆(SiO₄)₄(O,OH)₂で表され、鉄やアルミニウムを主成分として含みます。モース硬度は7～7.5と高く、条痕は白色です。マグネシウム、亜鉛、マンガンなどが鉄の一部を置換している場合もあります。

十字状双晶：特徴的な形状

十字石の最大の特徴は、しばしば形成される十字状の双晶です。これは2つの結晶が貫入して十字形になる現象で、この独特の形状から「十字石」という名前が付けられました。英語名stauroliteも、ギリシャ語の「十字」(stauros)と「石」(lithos)に由来しています。肉眼で見える大きさの結晶は、一般的に角柱状です。また、斑状変晶として産出することもあります。薄片で観察すると、光学的に連続した双晶構造を示し、低い複屈折性を示します。鑑定においては、スイスチーズの穴のような石英包有物（ポイキリティック石英）が特徴的です。

産出：変成岩に含まれる指標鉱物

十字石は、中～高変成度の広域変成岩中に産出する鉱物です。鉄礬柘榴石、雲母、藍晶石、曹長石、珪線石といった他の鉱物と共に産することが多く、それらの鉱物との共存関係から、その地域の変成作用の程度を推定することができます。

主な産地としては、アメリカ合衆国ジョージア州が有名で、同州の州の鉱物にも指定されています。特にファニン郡では多くの十字石が発見されています。その他、バージニア州、アイダホ州、ニューメキシコ州、ミネソタ州、ノルウェーなど、世界各地で産出が確認されています。日本では富山県黒部市宇奈月町で産出し、天然記念物に指定されていますが、結晶サイズは小さいです。スイスのレポンティンアルプスも産地として知られています。バージニア州パトリック郡のフェアリーストーン州立公園は、十字石の産地として有名で、公園の名前も十字石の現地名に由来しています。

利用：地質学研究における重要性

十字石は、その産状や化学組成から、岩石が形成された際の温度や圧力条件を推定するための重要な指標鉱物として利用されています。地質学者にとって、十字石は、過去の地質学的イベントを解明するための重要な手がかりを提供してくれる鉱物なのです。変成岩の研究において、十字石の存在や特性は、岩石の形成過程や地質学的歴史を理解する上で非常に役立ちます。

まとめ

十字石は、その美しい十字状結晶と、地質学研究における重要性から、鉱物愛好家や地質学者双方にとって魅力的な鉱物です。独特の形状と産状、そして岩石の形成過程を知るための指標としての役割は、この鉱物をさらに特別な存在にしています。今後も、十字石に関する研究は、地球の歴史を解き明かす上で重要な役割を担っていくことでしょう。

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